『続・バレンタイン狂想曲』

「成歩堂!」
 威勢の良い声が事務所内に響く。僕は驚いてその来訪者を見た。
 赤ワイン色のスーツを着込み、ひらひらしたネクタイを締めた男。僕の友人、御剣である。
「どうしたんだ、御剣」
 御剣はずかずかと僕のデスクに向かってやって来た。
「君はメイに贈り物を贈ったそうだが」
「贈り物?狩魔検事に?」
 何を言い出すのかと思ったら……狩魔検事へのプレゼントがどうこうらしい。
 ……って僕、何かあげたっけ。
「なるほどくん、アレだよ、アレ。猫のぬいぐるみ!」
 真宵ちゃんがフォローを入れてくれる。
 ああ、そういえばホワイトデーのお返しであげたんだっけ。
 なんで御剣が知ってるんだろう。というか、それがどうしたんだろう。
「あのぬいぐるみの事?それがどうしたの?」
 僕の言葉に御剣が機嫌悪そうに、にらんだ。
「メイが自慢げに見せたのだ。君から貰ったと」
 自慢げ?ああ、じゃあ、気に入ってくれたんだ。良かった。
 ……だけど、それが一体?
「私は何も貰っていない」
 間。
 ……え〜と?
 僕は目の前の男を見た。
 ……この顔は真顔だ。この男、本気で言っている。
「えと、僕、何か君に貰いましたっけ?」
「昔、やった」
 即答で返事が返ってきた。
 げ。なんだろ、思い出さないよ。
「……な、なんだったかな?」
「自分で思い出せ」
 あ、顔がどんどん不機嫌になってる。ヤバイな、これは。
 え〜と、御剣が昔って言うんだから、小学校の頃のことになるのかな。
 あいつが転校する前に何かあったかなあ。
 持っているボールペンをくるくるさせながら考える。
 ん、ボールペン?
「あ!分かった!僕の誕生日に貰ったボールペン!」
「ようやく思い出したか」
 御剣はなんだか満足そうだ。僕も安心する。
「今も大事にしてるよ。ほらほら、年期入ってるだろ?」
 僕は先程からくるくる回していたボールペンを御剣に見せた。これが贈り物だったのだ。貰った時は、妙なものをくれたと思ったけれど、こうして長い間使えるというのは、年数が経ってからそのありがたさが分かる。
「……まだ使ってくれていたのか。そこまでは思っていなかった」
 心持ち、御剣は嬉しそうだ。
 そういえば、さっき何も貰ってないとか言ってたのは誕生日プレゼントのお返し……つまり御剣への誕生日プレゼントのことなのか。確か、タイミング外して渡せてなかったような気がする。
「なんだ、そんなことだったのか。
 安心してよ、今度の君の誕生日にはちゃんとプレゼント贈るからさ」
「う、うム」
 とりあえず、御剣は納得したようだ。
 僕はその後、お茶を出し、しばらく談笑したのだった。

「あら、レイジ。その机にある可愛いものはなあに?」
 執務室の机にあるペルシャ猫のぬいぐるみを見て冥は私にそう尋ねた。
「う、うム」
 とりあえず持ってきてしまったのだが、成歩堂から貰った誕生日プレゼントについていたのだ。
 簡単に事情をかいつまんで冥に聞かせると、彼女は笑った。
「レイジ、あなた、私のシャムネコの話をしたんでしょう。だから、きっとあなたもぬいぐるみが欲しいんだと思われたのね」
 笑って、冥はペルシャ猫のぬいぐるみをなでると、出て行った。
 ……確かに、事の発端は冥のぬいぐるみだ。まさか、そこで私にまでぬいぐるみを贈ってくるとは思わなかったのだが。
 何故、ペルシャ猫なのかはよく分からないが、見ているとだんだん愛着が沸いてきたので机に持ってきてしまった。
 まあ、こんなものがあるのも悪くはないだろう。
 なにせ成歩堂がくれたものなのだから。彼のように大事にしなくては。

 かくして御剣検事の机の上のペルシャ猫は、様々な人の話題になったという。


終。

ミツ→ナルです。否定しません。
なんかね、冥ちゃんにナルホドくんからのプレゼント自慢されて、ヤキモチ妬くみっちゃんが書きたかっただけです、はい(笑)。
ペルシャ猫なのは、みっちゃんのイメージなので。気位が高くてびらびら。(褒めてるんだかバカにしてるんだか分からない表現だな;)
ナルホド君はそんなカルマ一族の思いなど知らずに、オオボケなのです。はい。うちのナルホド君は天然受けですから……。ちなみにホモでもありません(笑)。ごめんね、みっちゃん。

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