『STEP』


「ねえ、私ってそんなに怖い顔してる?」
 いつも人懐っこい顔をしている幼馴染が思いつめたような表情で、ぐいっと迫ってきた。いつもなら明るく輝いているはずのその緑の瞳も今日は沈んだ色をしていた。
 彼女のその問いかけに、問われたほうの青年は困った顔をした。怖い顔……そりゃあ機嫌を損ねている時の顔は怖いように思うが……レベッカはとても『怖い顔』の部類に入らない。レイヴァンみたいにいつも不機嫌そうな顔をしている人間だったら当てはまるのだろうけれど。
「いや?別にそうは思わないけど」
 ウィルのいつもどおりの能天気な回答に、レベッカは暗い表情のまま頷いた。
「……そう」
 明らかに落ち込んだ様子の幼馴染に、さすがのウィルも心配になる。何かあったのだろうか。思い当たるのは『怖い顔』についての問いなのだが……レベッカに当てはまらないのは分かりきっている。
 ウィルはレベッカの方に向き直り、心配そうに彼女を見つめた。
「……何かあった?」
 優しくそう問われて、レベッカは返答するか戸惑っていたようだがゆっくりと頷いた。
 彼女は目を伏せて、悲しげに話し始める。
「あのね……、今日ね、天馬騎士の女の子に会ったの。
 その子は薄い紫色のふわふわした髪をしてて…すごく可愛くて。
 一緒にいるペガサスも真っ白で、お話に出てくるままの姿をしてて……。
 歳も近そうだったし、同じ軍だし、仲良くなりたいなって思って声をかけたの」
 レベッカの切々とした話にウィルはだんだん話の内容が読めてくる。レベッカが言っている相手はフロリーナだ。となると……彼女が落ち込んだ理由はきっと。
 レベッカは泣きそうな表情になって、顔を両手で覆った。
「そうしたら、私をみるなり『ごめんなさい〜!』って叫んで逃げちゃったの」
 レベッカは必死に表情でウィルに向き直り、訴える。
「ねえ、私、そんなに逃げ出すほど怖い?それとも何かしちゃったのかな?」
 必死のレベッカにウィルは想像通りの展開だったことを知り、苦い顔で頭をかいた。それなら、十分経験がある。
 ウィルはレベッカの肩にぽんと手を置いた。
「……なあ、天馬騎士の天敵って何か知ってるか?」
 突然、そうウィルに問われてレベッカはきょとんとなる。だが、まじめなレベッカは律儀に返答した。
「何って……弓とかアーチでしょう?」
 そう答えて、レベッカも思い当たるものがあったらしい。はっとした顔になり、その表情には驚愕の色が浮かぶ。
「……まさか、私があの時、弓持ってたから?」
「……正解。俺も相当逃げられた経験あるし」
 ウィルはゆっくりと首を縦に振る。
 フロリーナは初めて会った時もリンディスが一緒にいたから逃げ出さなかっただけで、常に逃げ腰だったし、おまけに男性恐怖症なので、さらにウィルはフロリーナに逃げられる対象になっていた。さすがに一年以上同じ軍に居たので、今ではそれなりに話せるようになっているのだけれど。
 確かにあれをやられると心に深く傷がつくのは仕方が無い。フロリーナの気持ちは分からないでもないのだが……別に襲うわけでもないのに恐れられるのは辛いものがあるからだ。
 それでもレベッカは幸い女の子だ。弓さえ持っていなければ、彼女と話すことも可能だろう。それに仲良くなれるかもしれない。
 だが、そんなウィルの気持ちを知って知らずか、レベッカは厳しい形相でウィルを睨み付ける。
「そんなの嘘よ!ウィル、普通に彼女と喋っているじゃないの〜!!」
 そう、レベッカの知っているフロリーナはウィルと懇意に話しているように見える。アーチャーが怖いのなら、ウィルなどとっくに逃げられているはずだ。勿論、そこに一年以上の苦労があるなんて分かるはずも無い。
「だから、俺も逃げられたっていってるじゃないか!」
「そんなはずないもん!」
 現状しか知らない幼馴染の反論にウィルは頭を抱える。こればかりは言葉で証明できるものでもないし、フロリーナに説明を求めた所で自分が言わせたと思われるのがオチだ。どうするべきかウィルは少し考えていたが、妙案が浮かんでニッっと笑った。
「……それが嘘だって言うんだったらレベッカが怖い顔して彼女を驚かせたんじゃないのか?
 ほら、今も眉はつりあがってるし、おっかないぜ」
 からかい口調で笑うウィルを見て、レベッカの怒りはさらに増幅する。
「ウィル!私、真剣なんだからね!ふざけないでよ!!」
「ふざけてなんていないって。ちゃんとお膳立てしてやるからさ」
 ぷ〜っとふくれるレベッカの額に人差し指をつんと当てると、ウィルは楽しそうに笑う。
 その口調に半ばからかいが含まれているのはレベッカにも分かったが、その言葉は本当であるらしい事も分かった。彼女はふくれながらも、しぶしぶ頷く。
「……約束よ」
「分かってますって」
 そんな彼女に気楽なウィルの笑顔が返って来る。どこまで信用して良いのか分からないけれど、今回は信じてみようとレベッカは思った。少なくとも、本当に逃げられているのならこの悲しみを分かっているはずだから。


 レベッカは手にした野いちごを見つめながら、目的の人物の元に向かっていた。
 お膳立てをしてやる。そう言った幼馴染が翌日どこからか持ってきたのがこの野いちごだった。彼が言うには進軍途中で見つけたのだそうだ。
 野いちご。普段だったらレベッカも気が付いていそうなものだが、慣れない軍隊での行動で分からなかった。そういう点、そんなことまで気がついている幼馴染は凄いと思わざるを得ない。こういう時、二つ年上である事と、ずっと旅をしてきた経験を改めて認識する。
 しかし、別の問題もある。野いちごなんかで話すキッカケなど作れるのだろうか?
 これを渡してくれる時に、ウィルは『フロリーナの出身のイリアって国は寒くって植物とかこっちと全然違うんだって。前も野いちご見てはしゃいでたから、絶対喜ぶって』と笑顔で言った。
 妙に自信のある顔だったので信用するのが一番かもしれない。なんていっても、レベッカよりは相手の事を知っているのだから。
 よし、頑張ろう。
 レベッカは心を決める。前方にはペガサスを連れた、薄紫色の髪の少女が見えてきていた。
 ふわふわの髪、可愛らしい表情。一緒に居るペガサスと合わせて見ると…まるでこの世のものではないようにさえ思える。本当に可愛らしい女の子だ。
 レベッカは息を呑む。声を掛けないと。逃げられたら逃げられた時だ。
「……お、おはよう……ございます」
 緊張でバクバクする心臓をなんとか抑えながら、レベッカはフロリーナに声を掛けた。彼女が振り返る。可愛らしい彼女の表情が驚きに変わった。
 また怖がられる。
 反射的にそう思ってレベッカは思わず目をぎゅっとつぶった。また逃げられる所を見たくは無かった。
 しかし、想像していた事と違う出来事が起こった。
「あ…あの……」
 フロリーナはおたおたとした様子でレベッカを上目遣いに見てははにかんだ顔をする。緊張しているようだが、逃げる様子でもない。逃げて行っていない事に気がついたレベッカは瞼を開ける。そこには真っ赤になっているフロリーナが居た。
「あ…あの…昨日は逃げたりして……その、ごめんなさい。
 わ…私、弓を見るとまだどうしても怖がってしまって……」
 おどおどとしたまま、フロリーナはぺこぺこと頭を下げてレベッカに謝った。
 そういえば……レベッカは思い出す。彼女がはじめて合流したときの事を。
 そう、キアランの危機を知らせに飛んできた彼女は弓兵に狙われて、撃たれはしなかったものの、バランスを崩して落ちてきたのだという。レベッカが伝え聞いた時はフロリーナが落ちてきたという事よりも、落ちてきたペガサスとその乗り手の少女をヘクトルがキャッチしたという人間離れした驚きの噂だったのでフロリーナがさらされた危険の事は覚えていなかった。
 だから余計にレベッカの弓を見て驚いたのだろう。
 それを思うとレベッカは目の前の少女がとても可愛らしく思えて思わず笑顔になった。
「いいえ、私のほうこそ驚かせてしまってごめんなさい。
 私はレベッカっていうの。これからも宜しくね、フロリーナさん」
 優しい笑顔と声でそう言われて、ぺこぺこと頭を下げ続けていたフロリーナは顔をあげ、目の前の少女を見て嬉しそうに笑った。
「は…はい。あ、あの…私こそよろしくお願いします。
 あ…ええと…フロリーナって呼んで下さい」
 たどたどしい話し方ながらも彼女は精一杯の気持ちを込めてレベッカに微笑みかけた。
 可愛らしくて天使みたいだとレベッカは思った。
 笑顔を見てレベッカは手に持った野いちごの事を思い出す。ウィルいわく、彼女が喜ぶと言っていた。
 ちゃんと仲良く話せたけど、喜んでもらえるならこれも渡した方がきっと良いわよね。
 そう考えてレベッカはフロリーナに野いちごの入った小さな包みを差し出した。
「えっとじゃあ、フロリーナ。これ…良かったらどうぞ」
 差し出されたものをフロリーナが覗き込む。その中に赤い小さないちごが入っている事に気が付いてどんどん嬉しそうな顔に変っていった。
「こ…これ、野いちごですよね?…私に?」
 愛らしい顔が満面の笑顔でいっぱいになる。その嬉しそうな顔を見てレベッカは幸せな気持ちになった。
「ええ」
 こんなに喜んでくれるとは思わなかった。後で、ちゃんとウィルにお礼を言わないといけない。こんなに彼女を喜ばせるお膳立てをしてくれたのだから。
 フロリーナは嬉しそうな顔でにっこりと笑った。
「本当に?それじゃあ、レベッカも一緒に食べましょう?」
「うん!」
 打ち解けてきた柔らかく温かい空気にレベッカは満面の笑みでそう答えた。


 そんな二人を見守る影があった。
 良かった、上手くいったんだな。
 遠巻きに見ていたが、二人の楽しそうな雰囲気は伝わってくる。ウィルは安心してその場を離れようとした。
 が、自分のほかにも二人を見ている者に気が付く。
 木の陰に隠れて、じっと様子を伺っている濃い緑色の長い髪の凛とした少女。彼の主人とも呼べる人だ。
 何をしているんだろう?
 不思議に思ってウィルは彼女に近寄ると声をかけた。
「リンディス様、何をされているんですか?」
「きゃあ?!……なんだ、ウィルじゃない。脅かさないでよ」
 いきなり声をかけられた方は驚いた顔をして振り返り、相手がウィルだと確認すると安堵のため息を漏らした。
 そして、再び視線をフロリーナとレベッカに戻す。気付かれた様子が無い事を確認すると、リンはもう一度ため息をつき、ウィルを恨めしげに見た。
「気が付かれなくて良かったわ。……びっくりしたんだから」
「……いやその、俺…レベッカの奴がフロリーナと話したがっていたから、ちょっと心配になって様子見に来たんですよ。そうしたらリン様が居て……。あ、やべ、リンディス様だった」
 ウィルはおたおたしながら話し、名前の呼び間違いに気が付いて慌てて修正する。そんな彼を見てリンはふふっと笑った。
「良いわよ、リンでも。
 私はね、フロリーナを見張ってるの」
 リンは再びフロリーナに視線を向けるとそう言った。
 フロリーナを見張る?確かに彼女は危なっかしいが、仲の良い二人なのだから傍に居れば良いだろう。ウィルには何がなんだかよく分からない。
「……それなら、傍に居たらいかがですか?」
 ウィルの言葉にリンは首を横に振る。その表情は極めて厳しい。
「それじゃあ、駄目よ。あいつが現れないじゃない」
「……あいつ、ですか?」
「そう、あいつよ!あいつがフロリーナに近寄らないように見張ってるのよ。
 あの子、ただでさえ男性恐怖症なのに、あんなにおっかない男が近寄ったら失神しちゃうわよ。
 だから、見張ってるの」
 あいつの正体は分からないが、とにかくリンはフロリーナに男が近寄って来ないように見張っているらしい。過保護なくらいリンはフロリーナを護っている様な印象があるけれど、二人を見ている限りではそれも当然のように思えた。しかも、その相手というのが好ましくないのだろうか、リンは物凄く嫌そうな顔をしている。
「……そんなに嫌な相手なんですか?」
 ウィルの言葉にリンは困った表情に変わって彼の方を見た。
「……そんなに悪い奴でもないし、話しているぶんには結構楽しいんだけど……」
 だが、悩んだ表情は直ぐにまた怖い顔に戻る。
「だ、け、ど!フロリーナの事、なんとかしろって私に言うし、近寄るなって言ったのに知らない間になんだか仲良くなっているみたいだし!!
 私の可愛いフロリーナに何かあったら大変だもの!!」
 ぐっと拳に力が入っている。どうやら相手がどうこういうより、フロリーナに近寄ってくる相手に対するヤキモチに近いらしい。その『あいつ』という人も大変だろう。リンのフロリーナに対する思い入れは友情の域を上回っているようにさえ見えるから、ヤキモチだって並みではなさそうだ。
 しかし、考えようによってはフロリーナに彼氏が出来そうだというまたとないチャンスのような気もする。それはそれで貴重だ。
「……で、でもリンディス様、フロリーナも随分しっかりしてきましたし大丈夫ですよ」
 おそるおそるウィルはリンに進言する。今は前ほど無差別に男性恐怖症でも無いし、あまり過保護が過ぎるのも良くない気がした。
 だが、リンがジロリと怖い目でウィルをにらみつける。
「大丈夫なんかじゃないわよ!フロリーナは私がしっかりみてやらないと!」
 特に『私が』に力を込めてリンが力説した。まるで娘を嫁に出す父親のようだとウィルは思った。見た事は無いのだが噂に聞くところによれば今のリンに極めて似ている気がする。
 だが、話は思わぬ方向に転換した。リンはきっとした瞳のままウィルに指をつきつける。
「ウィルだってそうでしょう?」
「へ?」
 いきなり自分に話が振られて訳も分からずウィルは目をぱちくりとさせた。
「ほら、あの子!レベッカちゃんっていうんでしょう?あなたの幼馴染だっていうじゃない。
 可愛い子だし心配じゃないの?」
「し…心配…ですか?」
「そう、セインみたいなのに声かけられないだろうかとか!」
 セインにナンパされているレベッカがウィルの脳裏に浮かぶ。少なくとも彼ならレベッカを見て声をかけない筈が無い。いや、女性に声をかけないはずがないの方が正しいだろうか。
 セインが女好きなのは分かっている。だが、ナンパな性格とは裏腹に根本的には騎士であり紳士的でもあるし、明るく気さくな人物で良い人だとも知っている。
 だが、セインが良い人というのとレベッカに声をかけるというのは別問題のような気がした。
 さすがのウィルも難しい顔になる。
「……それは……さすがに……」
「でしょう?」
 何故かリンは勝ち誇ったような顔をしている。フロリーナが関係しているとどうもリンはいつもと調子が違うような気がするのは気のせいだろうか?
「ウィルもぼさ〜っとしていると、知らない間に大切な子、取られちゃうわよ!」
 リンはまるで小さい子を諭すような顔でそう言った。「も」と言っているあたりに実感が篭っているような気がする。
「……あ」
 リンは何かに気がつくと慌てた表情に変わった。その視線の先には誰かを探しているらしいオレンジ色の髪に真紅の鎧の青年が居た。
「ケントが探しているみたい。行かないと」
 リンは再びウィルの方に振り返ると、指をびっと立ててにっこりと笑った。
「じゃあ、私の代わりにフロリーナの見張り宜しくね!
 あいつが来たら追っ払っといてちょうだい!」
 そう宣言するとリンはケントの方に駆けて行った。
 一方、理不尽な見張りを頼まれた方は呆然としていた。
「……あいつって……誰?」
 結局正体の分からなかった『あいつ』なる人物が来ないか見張らなくてはならないという訳の分からない命令に首をかしげる。
「……まあ、いいか」
 楽天的な性格なので、すぐにそう考えると遠巻きにフロリーナとレベッカを見守ることにしたのだった。


「ありがとう、ウィル」
 特に何事も無く、理不尽な見張りの報告が終わってやれやれと息をついていた時にレベッカが現れてウィルに感謝の言葉を述べた。
「あ、ああ」
 そう言われてウィルはどう返事をするか困った。フロリーナの見張りを頼まれていた彼は結局のところ、レベッカとフロリーナを遠巻きとはいえ見ていた事になる。話を聞いていた訳ではないが、楽しそうに話しているのは分かっていた。だから、改めてそう御礼を言われると覗き見していた事実があるために後ろめたい思いがした。レベッカは兄のダンと同じように真っ直ぐした気性の持ち主だ。ばれたらそれはそれでタダでは済まない様な気がする。
「え…えっと……その……なんだ。…上手くいってよかったな……」
 だからといってウィルはあまり嘘が上手なほうではない。特に気心がしれている幼馴染達の前では余計だ。しどろもどろの返答にレベッカもおかしいと感づく。
「……ねえ、なんでそうしどろもどろな訳?」
「へ?!……あ、いや…その…えっと……」
 レベッカに追求されて、ウィルは要領の得ない返答になる。なんとなく事情が飲み込めたレベッカは、やれやれと大きく首を横に振った。
「ウィル、もしかして私の様子見に来てたの?」
「へ?!…えっとその……。
 ごめん!悪気は無かったんだ!!」
 一番付かれない様にしていたはずの事実を突っ込まれてウィルは慌てたが、そこまで言われては嘘を突き通す自信も無く素直に頭を下げて謝った。そう、最初はちょっと心配で様子を見に行っただけだったのだ。それがいつの間にやらフロリーナの見張りになってしまったのだけれど。
 レベッカに思いっきり怒られると覚悟したウィルだったが、当のレベッカは呆れたような顔になってからクスクスと笑い出した。
「ふふ、ありがとう。心配して来てくれたんでしょう?
 もうそんなに心配しなくても良いわよ。私だってもう15だし、お兄ちゃんやウィルが居なくても大丈夫なんだから」
 そう言ってレベッカは人差し指を振るとウィルに微笑んだ。その表情は彼女が言うように、もう5年前のものとは変わっている。元々しっかりした女の子だったが、それが一層強くなり、子供というよりはもう一人前の少女の顔をしていた。
 15。出会ったばかりのリンディスもその歳だった。彼女は15で祖父を助けるためにお家騒動の終結のためはるばるサカからキアランへと向かったのだ。そう考えればレベッカももう一人前なのかもしれない。
 ダンが居ないなら居ない分、自分が彼の分もレベッカを支えてやろうと思っていたけれど、それは必要の無いことなのかもしれない。そう感じると何だか寂しい気持ちに襲われた。昼間のリンディスがフロリーナに対してああいう風に言っていたのもこういう寂しさがあるのかもしれなかった。そう、離れていってしまうような寂しさが。
 寂しいと思ったことが顔にまで出てしまったのだろうか、目の前のレベッカの表情が自信にあふれていたものから少し変わる。
「……でもね、やっぱりウィルが居ると安心する。
 エリウッド様のお力になりたかったのと、お兄ちゃんを探すんだって村を飛び出してきたけど不安も多かったんだ。だから、キアランでウィルを見かけたときは凄く嬉しかった。
 ウィルがここに居るから、私、安心してこの軍に居られるのかもしれない」
 そう言ってレベッカは俯く。改めてそう言うのはやっぱり照れくさいものだ。それでも、この気持ちだけはちゃんと伝えておきたかったから。
 レベッカは顔を上げるとウィルに微笑んだ。
「だから……もう勝手に居なくなったりしないでね?」
 その言葉にウィルは思わず息を呑んだ。
 そう、寂しい思いをさせてきてしまった。それを埋められるわけではないけれど、埋めることなど出来ないけれど……それでもこうして出会えたのだから。
 どこかにダンの分もレベッカを護ってやろうと思う気持ちがあった。今も行方の知れないダンに対する謝罪の意味合いが強かった。レベッカに対する謝罪の思いが強かった。
 だけど。
 昼間のリンディスの言葉が脳裏をよぎる。そう、彼女の言葉は的を射ていたのだ。
 レベッカを護ってやりたいと思ったのは謝罪の思いだけでは無かったから。
 それより強い思いがあったから。
 彼女は大切な幼馴染。大切なかけがえのない人なのだから。
 だからウィルはレベッカの言葉にゆっくりと頷いた。
「ああ、もうどこにも行ったりしないよ」
 その言葉に幼馴染の少女が心から嬉しそうな表情になった。
 その笑顔を見てウィルも心が満たされる思いがした。
 そう、この笑顔を護り続けていきたいのだから。


 終わり。

 そんな訳でウィル×レベッカ第二弾です〜。ウィルレベが好きなんだ、この気持ちを主張しなくては!という勢いが強い今日この頃です。人気はあるような気もするんですが…ウィルレベサイトさんがとても少なくやはりマイナーなような気もする状態でございます。
 ウィル×レベッカの最大の魅力っていったらやっぱり可愛い事でしょう!!なんていうか、子猫同士がじゃれているような感じの!で、レベッカの方が強そうなんだけど、そんな彼女をウィルがふんわり包んでいるところも良いんですよ〜(><)!!なんていうかもう、ウィル×レベッカ万歳の日々でございます。こう、浮かんでくる話がふんわり可愛い話しか浮かばず、癒される思いです。良いですよね、良いですよね(><)!!(身近に語り合う相手もいないので一人主張)
 ウィル×レベッカ…とりあえず今回の話は最初の一歩的な感じです。まあ、元々幼馴染なんですから、それ以外の感情を持たなければ始まらない訳で。彼等の場合は何だかんだ離れていた訳なのだから自然にそういう感情持っていってもおかしくないんだろうなと思います。そんなイメージの元、ふくらませてみました。
 ウィルを書いていると一緒に出てくるのがラス、ダーツの他はやっぱりキアランメンバーで。今回は女性陣です。リン&フロリーナも大好きで…ヘクフロの時はリンって凄く複雑なんだろうなと思って。私のPLAYがそんな感じですからね。フロリーナはヘクトルAリンBなので特に(リンはケントAフロリーナB)。ヘクトルだから大丈夫だと思っているんだけど、フロリーナをとられるのは悔しいみたいな感じで。聖戦のラクチェ&ラナ並のときめきを感じます。そういうの凄い好きだったりするので。セリラナの時のラクチェとか。それでもって、ウィル&レベッカもカップルじゃないならきっとリンがフロリーナの事を思うようにウィルもレベッカが心配なんだろうな〜と思うんですよね。カップルになるならそれはまたちょっと違った感情も含めてで。そんな事を思ったので、気がついたら一緒に重ね合わせておりました。あと、フロリーナはレベッカにも一度は逃げたりしたんじゃなかろうかという憶測の元(笑)。チュートリアルの関係できっと過剰に描かれていたんでしょうけど、フロリーナの弓の怖がりようは忘れられないですねえ。ウィルはきっと深く傷ついたに違いないです。でもすぐに「まあ、仕方ないか〜」とのほほんと考え改めたでしょうけれど(笑)。ウィルって天然だけじゃなく楽天家でもあるような気がします。あ、ところでえらい書かれようのセインですが、彼が嫌いなわけではありません。逆です。大好きです。でもウィルがレベッカの事を好きなら、ウィルをからかってもレベッカに手を出したりしないんだろうなと思います。彼もレベッカの旦那さん候補ですけどね。個人的にセインはフィオーラ姉さんを是非落としてもらいたいところですが(笑)。
 そんな感じでしたが如何でしたでしょうか?ウィルレベッカの同志様に少しでも楽しんでいただけたら幸いです。これからもぼちぼち書いていきたい所存でございます…。

ブラウザの戻るでお戻りくださいませ