『私の王子様』


 真っ白い純白のドレス。女の子なら一度は夢に見るだろう、未来の自分のその姿。
 真っ赤なバージンロード、父に手を引かれて歩くその日。
 そして、待っているのは愛しい人……。
 それがもうすぐ現実のものとなる。
 仕上がったばかりの自分だけのウェディングドレスの前でリリーナはため息をついた。
 もうすぐ……もうすぐなのだ。子供の頃に密かに夢見た事が現実になるのは。
 そして隣で未来を誓い合う人も……思い描いていた通りになった。
 初めて会った時から好きだった私だけの王子様。
 幼さの残る顔つきだった赤い髪の少年は、大きな戦いを乗り越えて精悍な顔つきに変わっていた。悲しい時、辛い時に傍に居てくれた。
 もうすぐ……ロイと結婚するのね。
 リキアの要でありオスティアの盟主となったリリーナだが、フェレの公子でありベルンとの戦争で勝利を治めたロイとの結婚は反対などされる事も無くつつがなく話が進んでいった。
 婚礼の日にはベルン戦争を共にしたエトルリアやサカやイリアやベルンの人々も来てくれる話になっている。その再会も楽しみだった。
 リリーナは再びウェディングドレスを見つめる。
 思い描いていた光景。それは一つを除けば全て叶っていた。
 だか、叶わなかった一つはあまりにも大きい。
 このドレスを着た私を見たら……どう言って下さるのかしら。
 こみ上げてくる悲しみとせつなさで胸が震えた。こればかりは消えるものではないのだから。
「……お父様にお見せしたかったわね」
 ふわっと優しい声がリリーナの後ろから、温かく包み込むように聞こえてきた。小さくて細い声だが、その声は誰よりも優しくて温かい。
 リリーナはその声の主が誰だかすぐに分かる。その言葉にゆっくりと頷いた。
「ええ、お母様」
 リリーナの傍に母の温かく優しい笑顔があった。その笑顔にリリーナの心も軽くなる。
 薄紫色のふんわりとウェーブした柔らかい髪、歳よりもずっと若く見えるのはリリーナよりも小さい身長だからだろうか。
 強く大きく逞しい父親を持っていたリリーナにとって、母は父が抱きしめたら壊れてしまうんじゃないかと思うほど小さく、大人しく、線が細くてか弱かった。
 父の訃報を聞いた時に、リリーナは母が倒れてしまうのではないかとまで思ったものだし、母をしっかり護らないといけないと強く感じたくらいだった。
 だが、母は優しく温かい笑顔の母のままで……夫と娘の居ないオスティアを護っていたのは他ならぬ母だった。
 元はイリアの傭兵だったという話を半信半疑で聞いていたリリーナだったが、か細い母の中の強い心を知る事になったし、母の笑顔はいつも彼女を慰めてくれるものだった。
 フロリーナはリリーナの隣に立つと、娘のウェディングドレスを嬉しそうな笑顔で見つめた。その笑顔は小さな少女のようだとリリーナは思う。
「ふふ、でも頑固に結婚を反対していたかもしれないわ」
 フロリーナは何かを思い出したのか、楽しそうにくすくすと笑い出す。しかし、その言葉が父の結婚反対についての話だったのでリリーナは慌てた。
「え?お父様、ロイの事、凄く気に入っていたじゃない!」
「ええ、お父様はロイ君もエリウッド様も……とってもお好きだったわ。
 でも、あなたは誰にも渡したくなかったみたいだから。ふふ、まだ私と出会う前からそう言っていたみたい。娘はやらん、特にフェレの息子にはって」
 フロリーナの話にリリーナは目を丸くする。
 本人は気に入っている。でも、娘が絡むとなると話は別。
 あまつさえ、自分が生まれる遥か前から言っていたとは……。
「ふふ、やだ、お父様らしい」
 思わず笑いがこみ上げて来て、リリーナはころころと笑い出す。楽しそうに笑う娘に、フロリーナは優しい微笑を浮かべた。
 マリッジブルーとはよく言うが、父親を失った娘が悲しみにくれるのはそうでなくても想像できる。少しでも娘の不安な気持ちをフロリーナは取り除いてあげたかったのだ。
 娘のリリーナがもうすぐ結婚する。リキアはこれからリリーナとロイの二人で導いていくのだろう。
 リリーナとロイの結婚。おそらく夫のヘクトルにとっても格別な思いがあっただろうが、フロリーナにとっても特別なものであった。
 そう思うと、フロリーナは胸がおされる思いだった。
「……ねえ、リリーナ。私がイリアの天馬騎士だったという話は聞いている?」
「ええ。お母様、ぽや〜っとしているから随分信じられなかったけど」
「うん、ぽや〜っとしてたわ。特に見習いの頃は……天馬から落ちたくらいで」
 母のおっとしりた受け答えにリリーナは目を見開いて母の方に振り返る。そして、フロリーナを上から下へとじっと見た。
「……お母様、大丈夫なの?!」
 真剣な顔つきの娘に、フロリーナはかつて同じ顔で自分に問い詰めたヘクトルの事を思い出して、ふふっと笑った。娘はどちらかというと自分よりも父親に良く似ている。
「大丈夫よ、樹にひっかかったから怪我はしなかったわ。だけど、そのまま動けなくなってしまって……そこにある人が通りかかったの」
 フロリーナは懐かしむかのように、温かい目で言葉を続けた。その先には誰かが映っているかのようだとリリーナは思った。
「その人は私の事、助けてくれて……いろんなことを話したわ。
 風のこと、草原のこと、太陽のこと、星のこと、いつも楽しくて仕方が無かった。
 私の事、心配だからっていっつも気にかけてくれて、護ってくれたの。
 だから……私もその人が困った時は力になりたいと思って……追いかけて……一生懸命頑張ったの。他の誰よりもその人の事、思っている自信があったから……」
 リリーナは息を呑む。母の顔は……まるで恋する少女のようであった。
 その相手が父では無いのは容易に分かる。二人の出会いは、母がペガサスと一緒に父の上に落ちてきたというものだ。事あるごとに父は『あれほど最低な出会い方があるか』と言っていたが……あまりにも普通ではない出会い方ゆえに思い出も色あせないのだろう。
 つまり、樹にひっかかった母を助けた人は別の人なのだ。
 そして、母はその人の事をとても大切に思っている。
 父ではない、別の人……。
 リリーナは胸が強く痛むのを感じていた。きっとそれは母の初恋の相手。何かがあったからこそ父と結婚したのだろう。だけど、母はまだその人を思っているのだ。それが辛かった。
「……その人、お母様の初恋の人なのね」
 リリーナはなんとかそれだけ告げる。母の嬉しそうな顔を崩したくない思いが強かったから、せめて相槌くらいは打たなければと思ったのだ。
 だが、フロリーナはその言葉にきょとんとして目を丸くした。
「……初恋……っていうのかしら?私……男の人を好きになったのってヘクトル様が初めてだったから……初恋っていうならヘクトル様?」
 きょとんと首をかしげてフロリーナは考え込んでいる。
 その言葉の意味が分からないのはリリーナの方だ。
「だってお母様、その人の事大好きなんでしょう?」
「……うん、大好き。随分前に……私もエリウッド様もちっちゃかったロイ君も置いていっちゃったけど……ずっと大好き」
 フロリーナは俯きがちに、それでも優しい声でそうリリーナに告げる。その言葉を聞いて、リリーナはフロリーナの言った相手が誰なのか分かった。
 その人は……ロイの母親のリンディス……。母の……かけがえの無い友人だった人だ。
 リリーナは手が震えるのを感じていた。小さな母は優しい笑顔で微笑んでいる。だけど、母はかけがえの無い人を二人も失ってしまっていたのだ。
 そんな娘の手をフロリーナは優しく包み込む。温かい手のぬくもりがリリーナの手だけでなく心まで温かくしてくれた。
「不思議な縁だなって思うの。私とリンは親友で……ヘクトル様とエリウッド様も親友で……そして私達の子供達が結婚する。
 きっと……リンもヘクトル様も喜んでくれているわ」
 優しい母の笑顔。リリーナは胸が痛くなった。
 そう、きっと今は亡き父もロイの母親も祝ってくれるに違いない。
 きっと誰よりも幸せになれる結婚なんだと思った。
「でも私、お母様の話しぶりを聞いてたら男の人かと思っちゃった。まさかロイのお母様だなんて」
 ふふっと笑ってリリーナは母に微笑む。その言葉にフロリーナもくすくすっと笑った。
「うん、そうかもしれないわ。リンって私の王子様みたいな人だったから……。
 いつも私の事を守ってくれて、励ましてくれて、支えてくれてたの。だから、私もおかえししなきゃって思った。そんな人なの、リンは」
 リリーナの記憶の中のリンディスははっきりしていない。ロイにしてもそうだから当然だろう。だけど、かつての母とロイの母の交流は目に浮かぶようだった。
 そして思う。私も同じなのだと。
 ロイはちょっと頼りはなかったけれど、いつも一生懸命でリリーナの力になってくれて、いつも傍で笑ってくれていた。一緒に居る事が何よりの心の支えだった。
 母の王子様がロイの母親だったように、私の王子様はその息子なのだ。
 不思議な縁だと言った母の言葉を思い浮かべる。確かにこれほど不思議な縁は無いだろう。
「お母様」
 リリーナはフロリーナに呼びかける。母は優しく微笑んだ。
 その笑顔にリリーナは微笑み返す。
「……私の王子様と一緒に……幸せになります」
 幸せに満たされながら母と娘は微笑みあった。



「……ヘクトルの予言は的中してしまったな」
 ワイングラスを傾けながら、エリウッドはかつてを懐かしむように星空を眺めていた。
 生来から病弱で酒の類は控えてきているが、今日は飲みたい気分だった。
 窓の向こうには月が輝き、その光がエリウッドを柔らかく映し出す。テーブルに乗った二つのワイングラスも小さく輝く。ワインを湛えたグラスは赤く、空のグラスは白く光って。
 お互いに何かがあったら助け合おうと交わした約束は守りきれたのだろうか。
 苦戦するヘクトルの元にかけつけたのは息子のロイだった。そして……ヘクトルは戦死し、制圧されていたオスティア城と娘のリリーナを助け出したのもロイだった。
 肝心な時に城から出ることも叶わず、友は先に逝ってしまった。
 とはいっても、あの明快な友人のこと、そんな細かいことは気にするなと笑い飛ばすのだろう。
 ヘクトルといえばもう一つ思い出すのが、かつて聞いた夢の話だ。あのことをヘクトルにしてはしつこく覚えていたのだろう。母親同士が親友なのだからすぐに顔を合わせるに決まっているのに、リリーナをひた隠しにしていたのを思い出す。
 そう、かつてヘクトルが夢に見たとおり、彼には青い髪の娘を授かり、エリウッドは赤い髪の息子を授かった。ヘクトルには予感があったのだろう、子供達がいつか結ばれるという事を。
 もし、今も生きていたら反対したのだろうか。
 なんとなく、腹では仕方が無いと思いつつも一度くらいは反対していそうだ。さらにリンディスが居たりしたら、もっと話はややこしくなっていそうだ。
 喧嘩するほど仲がいい、ヘクトルとリンディスの関係はいつもそうだったから賑やかだっただろう。特にフロリーナの事が絡むと大騒ぎになって、傍で渦中の本人が泣きそうな顔でおどおどしていたのを思い出す。
 色々あったけれど……辛いことも沢山あったけれど、よき思い出も沢山あるのだ。
 どちらかといえばちょっとやそっとでは死にそうに無いヘクトルやリンディスの方が先に逝ってしまったのはなんとも皮肉な話だ。
 神妙な気分に変わってきた所に部屋のドアがきしむ音が聞こえてエリウッドはドアの方を見た。彼の視線に気がついた息子がぺこっと頭を下げ、部屋に入ってきた。
 辛くなった時に、その気持ちを癒すかのようにいつもロイは現れる。そんな所も母親に似ているのだとエリウッドは改めて思った。
 妻のリンディスは男勝りで粗雑に見られがちだったが、人一倍周りの事に気を配って心配している女性だった。エリウッドが辛い時もその痛みをまるで自分が受けたかのように受け止めていた。そう、誰に対しても。それは彼女が辛い思いをしてきたからこそなのだけれど。
「父上、僕も一緒に混ぜてもらって構いませんか?」
 にっこりと快活な笑顔でロイは父親に笑いかける。その笑顔にエリウッドは微笑んで、空いているグラスを息子に差し出した。
 なんとなく息子が現れるような気がして用意していたが、予想は当たったようだ。
「婚礼の準備は順調に進んでいるそうだな?」
 ワインをエリウッドに注いでもらいながら、ロイは首を縦に振る。
「ええ、招待状の返事もどんどん届いてますよ。皆さん、わざわざ来てくださるみたいです。……さすがにエルフィンさん……あ、ミルディン王子は難しいかもしれないそうなんですけどね。でも、リキアの盟主の結婚式だから是非伺いたいって」
 嬉しそうな笑顔でロイは話す。エリウッドもその笑顔は分かる。かつて自分がフェレをついだ時に駆けつけてくれた友人達の存在が何より嬉しかったからだ。
「レベッカがはりきってくれてるんですよ。ウォルトも一緒に手伝ってくれて……準備もほとんど出来て僕の出番なんてない感じで」
「はは、確かにレベッカは面倒見が良いからな。はりきっているんだろうな」
 世話好きなレベッカはわが子同様に育ててきたロイの婚礼をとても喜んでいた。てきぱき動き回っている彼女の姿は容易に想像できた。そして母親にあれこれ手伝わされているウォルトの姿も思い浮かぶ。
「ウォルトもロイと歳がほとんど変わらないな。レベッカのことだから、息子にも結婚をせかしたりしていないかい?」
 レベッカは結構心配性でもあるので、きっと息子の事も心配しているに違いない。前にもどこかで良い人くらい見つけてきなさいと言われているのを見た覚えもあった。
 エリウッドの言葉にロイはぱっと目を輝かせた。
「そうなんですよ!ウォルト、スーと仲良かったんですけど、結局二人とも別れ別れになっちゃって。でもスーのお父さんってレベッカやウィルのよく知っている人らしいってわかって、レベッカと今回をきっかけに縁結びでもしないかって話してるんですよ〜!」
 ぐっと拳に力を入れてロイは楽しそうに話す。育ての親の性格も影響するらしく、レベッカとロイは協調してしまうことが多い。それはレベッカとロイの真っ直ぐな気性から来ているようで、一致しやすいのだろう。そういえばハーケンやロウエン、アレンもそうだったなとエリウッドは思う。楽しそうな息子にエリウッドは微笑んだ。
「スーはクトラのお嬢さんだっけ?そういえばラスやギィもクトラだったけど……どちらかの娘さんなのかな?感じとしてはラスだけれど」
 エリウッドは以前紹介されたスーの顔を思い出す。初めてあった気がしなかった少女だった。クトラといえば昔共に戦った仲間に二人いる。レベッカ達との関連からいってもラスが妥当だろうか。
 正解らしくロイが大きく頷いた。
「ええ、そうなんです!昔、一緒に戦っていたって!父上もご存知なんですよね、不思議な縁だな」
「ああ、不思議な縁だね」
 不思議な縁、それは間違いないだろう。まるで申し合わせたかのように、ロイの仲間達はかつてのエリウッドの戦友の子達が混ざっていた。
「そういえばロイはサカには行ったのか?」
「え?はい、凄い草原で……見ていたら胸が熱くなりました」
 父の問いにロイは目を輝かせて言った。その瞳の奥には熱い炎が燃えているようだった。
 そう、彼の母親の瞳の奥にいつも輝いていたように。
 エリウッドは優しく微笑む。
「そうか……。その草原はリンディスが……お前の母親が愛した所なんだよ」
「え?母上はキアランの方では?」
 父親の言葉に息子が不思議そうな顔をする。無理も無い話だ。
「確かに家柄はキアランだけどね。リンディスは15の時までサカで暮らしていたんだ。
 ……いつも心の奥で草原を思っていた」
 エリウッドは懐かしむような瞳でロイに話す。その言葉にロイは草原で感じた気持ちを改めて思い出した。
 ……なんともいえない熱い気持ちは、母の血が騒いだのだろうか。
「私はね、リンディスから草原を奪ってしまった」
 ワイングラスを揺らし、揺れる湖面を眺めながらエリウッドは謝罪にも近い口調で話し出す。
「彼女が何より草原を愛しているのを知りながら、傍に居て欲しいと思ってしまった。
 ……それに彼女は応えてくれて……草原ではなくこのフェレで生涯を閉じてしまったんだ。今でも……それが良かったのか悪かったのか分からなくなるけれど……」
 エリウッドは顔を上げる。そこには心配そうに自分を見つめる息子が居た。
 そう、それでも。エリウッドは微笑む。
「お前が居てくれる事が一番嬉しいことだから……やっぱり良かったんだと思っているよ」
 父の笑顔にロイも微笑む。自分の存在が嬉しいと言われて喜ばない子供は無い。
「もう一つ、ありがたかったことがあるんだよ」
 エリウッドはロイを見つめながら言葉を続ける。
 そう、彼女をとどめてしまったけれど……救われることもあった。
「リリーナの母親がリンディスの親友だという話は聞いているだろう?」
「はい。とても仲が良かったと伺っています。よくヘクトル様が笑っておっしゃってました」
 邪魔者扱いまでされたんだと笑って話していたヘクトルが思い出され少し切なくなった。だが、目の前の父は……妻だけでなく親友も失ってしまったんだと思ったら余計に胸が痛かった。
「リリーナの母親フロリーナはねイリアの傭兵だったから、社交界なんかの風習はよく分からなかったんだ。だけど、彼女はオスティア盟主の妻だからちゃんと振舞わなくてはならない。リンディスも社交界は慣れてない世界だった。二人とも凄く苦労していたけれど……辛い時はいつも手を取り合って一緒に頑張っていて……私の目から見ても微笑ましくて羨ましいくらいだったよ。きっとリンディスにとって、フロリーナは誰よりもかけがえの無い人だったんだろうね。そして、フロリーナにとっても。私とヘクトルがそうであったようにね。
 フロリーナが居てくれて……本当に良かったと思っているよ」
 そう、フロリーナが居てくれて良かった、そう思う。リンディスは草原は失ってしまったけれど、彼女の大切な友達は距離的には離れているとはいえ、同じものを目指すもの同士、すぐ近くにいた。右も左も分からない中で、よそ者だと疎外感を感じる中で、二人は手を取り合って強く生きていた。
 ヘクトルが妻に選んだのがたまたまフロリーナだったということもあるけれど、リンディスとフロリーナの友情は結果的に長く長く続くことになった。
 今、こうしてロイが居てくれるのも、きっとリンディスとフロリーナ、そしてヘクトルのおかげだろうとエリウッドは思った。
「……僕の母上とリリーナのお母さんは本当に仲が良かったんですね」
 話を聞いていたロイが神妙に、だけど嬉しそうな顔でそう呟いた。
「僕にとってのリリーナもそうでした。
 オスティアに勉強に行ったとき、いつも僕の傍にいてくれて、色々教えてくれました。支えてくれました。この間のベルン戦争の時もそうです。リリーナは辛いのに、一生懸命頑張ってくれていました」
 ロイはそう言ってから一呼吸をついた。目の前では父が優しく微笑んでいる。それが何より心強かった。
「……だから、今度は僕が彼女を支えてあげたいと思うんです」
「そうだね。頑張れ、ロイ」
 息子の逞しい笑顔にエリウッドは安心感を覚える。
 きっとリンディスも喜んでいるに違いない。ヘクトルも喜んでいるに違いない。
 二人の分もロイとリリーナの事を見守ろうと、エリウッドは思ったのだった。


 おしまい。

ヘクトル×フロリーナ&エリウッド×リンディス前提のロイリリで、一番のメインはリン&フロリーナという大変主題の見え難いお話でした;
私自身、リンのカップリングってケントが好きなんですけど、エリウッドはリンが好きなんですね。まあ、なんというかリンのお相手は彼女を「リンディス」と呼ぶ人が好きみたいです。それは私が彼女をサカの少女リンではなく、キアランの公女リンディスとして彼女を見ているからに他ならないのかもしれません。
そして、もう一つ大きな事はロイの母親という視点で見るとリンディスだと思っているという事でしょうか(^^;。リンの真っ直ぐとした視線はロイとよく似ていると思うのです。だからロイの母親は私的にはリンディスなんですね。リリーナはヘクフロが好きなので出来たらフロリーナ希望って感じなんですが(笑)。なんか、リリーナの母親は三人ともぴんと来ないというか(^^;。リリーナが魔法使いだからずっとお母さんは魔法使いなんだ!って思っていたので、個人的には不一致でして;でも、フロリーナだったら生きているって感じがすごくするのですよ。彼女は表には出てこないタイプだから、封印のストーリーに直接登場していなくても生きているって感じがすごくして。で、頼りないお母さんを私がしっかり守るんだとヘクトル様ばりに気負ってる娘さんなリリーナとか想像すると結構微笑ましいですvでも、実はリリーナよりフロリーナの方がしっかりしてたりするというオチ付き希望(笑)。
ヘクフロでエリリンの時のロイリリっていうのは親友同士のカップルの子供同士ということで…結構ドラマティックかな〜と思っています。両親的にお互い感慨深いというか……。そんな事を思って、フロリーナとエリウッド視点での子供達の結婚話を書いてみようと思ったんです。ただ、書いていて気がついたんですが、このカップリングってリンとフロリーナにとっても最高だったりするんだろうなと思ったんですよね。二人ともなれないリキアの上流社会で…女友達だって作り難い中、お互いが居るってことはどんなに心強いことだったんだろうと思ったら……このカップリングって良いな〜と改めて思ったりしました。
まあ、欠点はリンもヘクトルも死んでしまうのがはっきりしている点ですが;
リンがケントとくっついた場合は…やっぱりヘクトルの死を知ったらフロリーナの元に駆けつけたりするのかな?そういうのも良いかなと思うのですよね。まあ、色々考えられるところもいいトコですが。
そしてメインはリン&フロリーナです!フロリーナにとって、リンって王子様だったと思うんですよね。ピンチの時に助けてくれるヒーローであり王子様。で、リンにとってはフロリーナってお姫様だったんじゃないかなと思うんです。お姫様は王子様を守りたいと思って、王子様はお姫様を守りたいって思って。両思いのらぶらぶカップルというかv女の子同士の友情って本当に大好きで…この二人の関係ってたまらないですv特に個人的に好きなのはヘクフロ+リンディスの三角関係(笑)。フロリーナの事でもめて喧嘩調な二人におろおろするフロリーナと仕方ないな〜と笑っているエリウッドとか良いな〜なんてvこの四人好きです、相当vvできたら四人セットがいい感じでvv
という訳で、今度はリンとヘクトルが死んでない烈火の状態で、またこの四人の話を書いてみたいです。あと、ケントvリンディスもやっぱり書いてみたい(笑)。絞れませんわ、私(^^;。

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