9.靴べら(Shoehorn)
<< 靴べらの製作 >> 2014.10
最初に製作の大雑把な流れです。
(a)靴べらにする材を切り出す(長いもの、手のひらに収まるくらいの短いもの、弓形やまっすぐなど)
(b)墨付け
(c)靴べらの内側アール面(凹面)を削る(現在はルーターを使用、使わなくてもできます)
(d)全体の形状を決めてカットする(くびれの形や太さなど)
(e)靴べら外側アール面(凸面)を削る(反り鉋、ヤスリ等を使用)
(f)靴べら先端部分の整形(放物線上の型紙を利用)
(g)ここからはひたすら削ります(鉋、のこヤスリ、小刀、スクレーパー、サンドペーパーなど)
(h)塗装(オイルフィニッシュなど)
少し細かい手順です。
(a) 材は白樫を例にします。他にケヤキなどの堅木でも同様です。
 まずは板材より写真のように適当なカーブの型紙からひたすらバンドソーやジグソーで切り出します。この切り出し方が材料の無駄が抑えられる方法だと思う のですが、完成したときの木目を考えて、靴べらのアール部分が木の表か裏かにくるように切り出してもよいでしょう。弓形にしたいときはまたその部材を加工 しなければなりませんが。
 この写真では白樫の厚さ38ミリの一枚板から約20本弱切り出しました。長さは90センチありますが、今は長い靴べらを作っているので80〜90弱が完成時の仕上がりです。90以上はさすがに長すぎるので適当にカットします。
 まとめて切り出したら1ヶ月くらいほおっておきます。シーズニングです。たまによじれたりするのが出てきますが、まぁ無理して整形しなくてもそのまま加工して味がでるかもしれません。
 まっすぐな靴べらを作るなら単純に角材に製材すればよいだけで、画面の右上に見えているのがそれらです。この角材を斜めに長く2等分して2本作成します。
 元と末は一応心がけますが、切り出した材を見てどちらを靴べらの先端にするかを決めています。
虫食いがあったり、ゴマフアザラシのような斑点があったり、とても見事な杢(樫目)が表れたりで色々です。

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(b) 墨付け
1)先端の削るところにセンター線を引き、木口にも引く。
2)木口の長方形部分に靴べらの断面をかく。長方形の底面からr29の型紙を作っておきなぞる。同様にr24の型紙をあててなぞる。へら部分の厚みは約5ミリとなります。
 靴べら面のアールはずいぶんと試行錯誤しましたが幅が30〜40ミリでは半径24ミリがたくさんの方のかかとになじみそうだということがわかりました。なのでわたしの作る靴べらはすべてそうなっています。

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3)木口の墨付けは以上で、次は木端(側面)です、画面右側の部分にかきます。
 アール面の上面を基準に右斜め上方向に斜線を描きますが長さは27〜28センチです。
 しかし、靴べらの長さにあわせなければなりませんので、短めの靴べらを作るならもっと短くしなければいけないでしょう。これもデザインのうちですのでいろいろ試してください。
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(c)靴べらの内側アール面(凹面)を削る(ルーターを使用する場合)
 最初に材を固定するための治具の写真です。 
試作品として端材やジャンクネジ類を集めて作ってみました。ところがこれで十分な強度と精度があることがわかりそのまま使っています。
shc
1)靴べらの材を両側から挟んで固定しているだけです。
水平に固定してしまうと雨樋状の半分の筒みたいになってしまうので、少しだけ斜めにして固定します。このときに基準にする線が側面に描いた斜め線になります。靴べらの先端を治具の面と同一にして側面の斜め線が治具の台と平行になるよう靴べらの材を固定します。
shc1
三寸or四寸の柱材は、靴べらが弓なりの形状でそれを傾けて固定するため、靴べらの真ん中あたりから作業台にぶつかってしまいます。そのための逃げが必要で、他の方法でもかまいません。
 反対側の握り部分もクランプしてますが、このときはなんとなく不安定でしたので安全のためにしています。しないことの方が多いです。
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2)固定がすんだら、ルーターを滑らせるガイドの調節です。
ルーターの直径と同じ幅の板にセンター線を描きこの線がこれから削る靴べらの凹アール面状のセンター線と一致するように微調整します。両側のガイド板は鬼目ナットと蝶ネジを使用。
shc2_1

shc2_2
3)12ミリのストレートビットで荒削りします。
墨線の上、約1ミリ上をねらって3段くらい削れば十分です。凹面の両サイドの段が大きいところは細かく階段状にすればかなり墨線に沿うことができますが、わたしは3段くらいを目安にしています。
 断面が5ミリ×10ミリのアルミのスペーサーを2本使って右側から順に削ります。ただこのアルミのスペーサー精度が甘くて、現在は我慢しながら使い勝手が良いのでしぶしぶ使用してます。
shc3
ここからは今まで行ってきた3通りの手順を説明します。
(i)垂木などの角材でかまぼこ型の凸面が靴べらの凹面とピッタリ重なるような木型を作ります。これはこの後にも使用する道具ですので必ず作っておいてください。この凸面の木型にサンドペーパーを重ねて靴べらの凹面を削る訳です。
 ですので凸面の木型の半円状の半径はサンドペーパーの厚さも考慮して24ミリ弱で作成します。
階段状の凸凹がなくなるまで忍耐強く削ればきれいな靴べらのアール面ができます。
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(ii)コアボックスビット(r10)を使っ て更に階段状の凸凹を削り、木型で更にならす。この方法が一番長かったのですが、何本も靴べらを作ろうと思うとこの段階がかなり大変な作業と時間をとられ てしまうことになり、現在では次の方法で削っています。しかし、使うビットが注文品で一般向けではなく高価なので万人向けではありません。
(iii)r24のコアボックスビットもどきを使うとあっさりと凹面が完成します。(写真ではビットの下半分がうつっていません)
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 ハンドルーターで扱うには大きいビットですので大変に危険で0.1〜0.5ミリくらいずつ削ります。このビットはまだ試作品で切削面の中心に跡が付いてしまうのです。手持ちのオフコのディッシュビットやコアボックスビットでは跡がつかず、虫眼鏡でみてもどのような刃付けをすればよいのかよくわかりません。どなたか、ノウハウをお持ちの方教えて下さい。お願いします。

shc_ii_1
shc3_ii_2
さてルーターを使わない場合ですが
靴べらの凹面をのみや他の切削道具で削って先ほどのかまぼこ型の木型にサンドペーパーをあてて完成させるという方法で作成していました。
(d)全体の形状を決めてカットする
 形状を決めて墨線を引きます(写真では見にくいです)。直定規と写真の一番上の型紙を使ってます。
それからおもちゃみたいな卓上バンドソーで切り出しますが、弓なりになっているので気をつけます。
Before
shd1
After
shd2
(e)靴べら外側アール面(凸面)を削る 
鉋で削るときは、例えば写真のように固定することが多いです。固定のしかたは治具と同じで、それぞれの場面での目的に応じた工夫ですから、他の形で固定することもあります。
 かまぼこ型の木型ですが、ここでも利用しています。

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she2
(f)靴べら先端部分の整形
 型紙の放物線状の線を靴べら先端内側に描き、まずは鋸で落とします。ヤスリで墨線を必ず残して形を放物線状にします。裏から鋸ヤスリでスプーンの先端のような形に整形し先端を薄くしてゆきます。薄くしすぎないようやや厚めが好みです。
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以上、あとはデザインした形に仕上げ、オイルを塗って完成。
ベルトサンダーなどのサンダー系の電動工具、あるいは旋盤があればもっと簡単に成形加工できるのですが、わたしの現在手持ちの道具類ではここで紹介した手 順が精一杯。しかしながら、そこそこ気に入ったものを仕上げることができ、木工製作を楽しむことができています。ともあれまずは安全第一!
 なお、短い携帯できる靴べらを大量に制作するなら削っては切るを繰り返せば簡単にできます。短い材では固定できないので凸面を削るのが危険だし大変です。

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治具の奥の金具(全ネジのボルト)が材にぶつかって材を固定するときに困っていたのですが、単純にボルトを抜いてクランプで固定すれば簡単安全に固定できました。
この治具で凹面加工は約40cmまでできます。
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