鴨川の地滑り地帯
鴨川市磯村の突端から雀島を中心として、弧状に発達する八岡海岸の北側では、典型的なここでは、地滑り地形の特徴や、その災害対策工事の仕方などが観察できます。
この付近は、地滑りでずれているために岩石の露頭はありません。しかし、海岸には、その上方から滑り落ちた岩石の転石がたくさんあります。その中には、嶺岡山系を構成しているゲンブ岩、粗粒ゲンブ岩、ハンレイ岩、巨晶質ハンレイ岩、ジャモン岩、まれにセッカイ岩、チャートなどが見られます。また、時に菊花石が、波打ち際にうち寄せられていることがあります。
松島から30分ほど嶺岡林道を歩くと、林道の両側にひなだん式に別荘団地がつくられています。嶺岡山系の尾根の地域では、北、東、南の三方が見渡せ、保養地としても有名です。しかし、地質上、少々心配なことがあります。それは、嶺岡山系に蛇紋岩が多いことです。この岩石は風化すると、滑石と石綿が生じ、大雨が降ると雨水が蛇紋岩の割れ目にしみこんで斜面では地滑りを起こしやすいのです。その証拠に、かつて地滑りを起こしたと見られる地形が南側や北側の斜面にいくつも見られます。この地滑りを防ぐために雨水の排水溝を整備して、防災対策をとっています。
参考文献:前田四郎監修「新・千葉県地学のガイド」コロナ社