濃度の光景から

      
繊維の一本,一本を這うような「光」を追ってみる。微妙にゆれては漂い、ながれてゆく。

       シルクオーガンジーには、竹中明子の世界が染めあげられている。近寄ってみると感じる
       繊細な色づかいと、有機的な絵柄たち。それらは、緻密で大胆な制作行程から生み出したとは
       連想しがたい不思議な表情に満ちあふれている。

       具体的に何をどう表現したの?という愚問の前に「濃度」という、キーワードを考えてみよう。

       これは、この展示のタイトルでもある。
       水の濃度、大気の濃度、雲の濃度、風の濃度、光の濃度、のように、自然からくる「濃度」。
       一方、日常生活の営みがもたらす様々な「濃度」という感覚もあるだろう。
       加えて、竹中明子はもっと有機的で体内的な「鼓動」の濃度を汲み取っているようだ。

       インスタレーションは、12枚の布と、15分の映像の構成にすぎない。が、それらが交わる事で
       「物質的質量」を越えた、いわゆる計測不能な「濃度」の表現を試みている。

       先に掲げた濃度は、日常の中では、当たり前の様に接している「無意識の濃度」なのだろう。

       その、無意識で計測不能な濃度を意識する。この作品はその一つの「解」である。
 
                                            ビデオ映像・構成 倉嶋正彦