- 無性の結晶たち- プロローグ





           ボ  ク  ハ

           オ  ト  コ  ノ  コ

           ダ  ッ  タ  ン  ダ



           生きていたいと思うのに
           方法が分からない


           僕は
           両親がセックスをしないで生まれた子供
           性をうけないで生まれた子供

           だから 

           僕の胸はいつまで経っても 膨れない
           僕のペニスはいつまで経っても 勃起しない



           ボ ク ハ

           シ ラ ナ カ ッ タ ン ダ



           僕が男の子であったこと
           僕以外の性があるってこと
           僕はお化粧なんかしちゃ駄目だってこと

           子供はセックスして生まれるってこと



           ボ ク ハ

           シ ン ジ テ イ タ ン ダ


           みんな胸が膨らまないこと
           みんな勃起しないこと
           下着に詰め物をするってこと
           そうでなければシリコンだってこと

           子供は僕のように
           鉄の箱から生まれるってこと


           全てが違う
           全てが変わる


           僕は どう 生きて ゆくの


           町で仮装するように歩くこと
           お酒を浴びるように呑み干すこと
           髪をなびかせて大股で行き過ぎること
           手を繋いで笑い合うこと
           大きな鞄を持っていること
           自転車で信号を無視していくこと
           つり革にもたれて目をつむること
           足を隠して通り過ぎること
           足を出して通り来ること
           食べ物を要するため長く待つこと
           ポケットに手を突っ込むこと
           煙草を吹かして座ること
           車の中で静かに眠ること
           歌を唄ってお金を貰うこと
           紙をばらまいて叫んでいること
           映画館の前でねそべっていること
           そしてそのポケットからお財布を抜き取ること
           自転車の鍵を壊していること
           泣きながら踊っていること
           笑いながら足踏みしていること
           手をさすって遠くを見ていること
           背中を丸めて空き缶を蹴飛ばすこと
           ゴミに顔を近づけて何かを探していること
           人に突っかかって話をしていること
           人により添って首を絞めていること
           ナイフを持つこと
           ピストルを抜くこと
           そして撃たれること

           笑う こと


           僕はあらゆる方法を探しては
           それに近いことをやってのけようとした
           それに近づこうとした けれど



           ボ ク ハ

           ソ レ ニ ハ

           ナ レ ナ イ ン ダ


           許して下さい
           僕を
           許して下さい

           あなたたちとは同じ
           人間
           それにはなれないことを



           ボ ク ヲ

           ユ ル シ テ ク ダ サ イ



           人間として生まれてきて
           人間として生きれないこと

           ただ一つ 分かったこと




           ボ ク ハ

           オ ト コ ノ コ

           ダ ッ タ ン ダ