〜性格検査の問題点〜
心理学でよく使われている性格検査では、血液型による性格の差をうまく検出できません。
例えば、世界的に使われている「ビッグファイブ」を使った研究では、その多くは差が出ていないのです。
やはり、血液型と性格を分析するには、既存の心理学では力不足のようですね。(汗)
海外での研究の一覧は、次の韓国の論文に紹介されています。
Sung Il Ryu, Young Woo Sohn (2007). A Review of Sociocultural, Behavioral, Biochemical Analyses on ABO Blood-Groups Typology, Korean Journal of Social and Personality Psychology, 21(3), 27-55.
この論文では、「Big-Five Factor モデルを活用した研究では、すべて血液型と性格は関係がないという結論が下された(So Hyun Cho, 2005; Cramer, 2002; Rogers, 2003; Kunher, 2005)」とあります。
以下がこの論文で紹介された研究の一覧です。
この韓国の論文がすごいのは、それであきらめずに、差が出ていないデータを再分析したところです。
ビッグファイブでは、個別の項目では差が出ているのに、5つの性格因子にまとめる仮定で、差が打ち消されて消滅するというのが執筆者の主張で、その要約は次のとおりです。
【日本の研究】
日本でも状況は同じようです。
川名好浩(川村学園女子大学)
血液型性格判断 −Big Five でのプロフィール−
日本心理学会第67回大会論文集 p156 (2003年)実際の血液型ごと、Big Five因子ごとの平均因子得点は、上図[省略]に示すがごとくであるが、ほとんど平均値に有意差は認められなかった。(サンプル33名)
森圭一郎、原野睦生、江藤義典、津田彰、内村直尚(久留米大)、中川康司(奈良県医大)
TCIとBig5による性格とABO式血液型の関連解析
日本生物学的精神医学会プログラム・講演抄録 第27巻 p306 (2005年)Big 5の「建前」でA型がO型とB型に対してそれぞれp=0.0014とp=0.0377で有意に低く、同じくBig 5の「外向性」でAB型がA型に対してp=0.0477で有意に高かった。Big 5のその他の項目およびTCIの全ての項目では、有意差は見出せなかった。…しかしながら、4群間の14項目の比較、つまり84回の比較検定では、5%を有意水準とすると4回のfalse positiveが出る可能性があるとも言えるわけで、さらに慎重な追試・検討が必要であろう。(サンプル172人)
久保義郎・三宅由起子
血液型と性格の関連についての調査的研究
吉備国際大学研究紀要(社会福祉学部)第21号 p93-100 (2011年)V.結果
3.研究1:Big Five による検討
血液型間に有意な得点差は認められなかった。(サンプル273名)
Sohyun Cho, Eunkook M. Suh, Yoenjung Ro (2005). Beliefs about Blood Types and Traits and their Reflections in Self-reported Personality. Korean Journal of Social and Personality Psychology, 19(4), 33-47.
<韓国語抄録を和訳したもの>
本研究では、最近の社会的に大きな関心を集めている血液型と性格の関係について調べた。大学生を対象に研究を実施した結果、最も一般的な性格検査と呼ばれる性質のビッグファイブ性格検査と血液型の間には統計的に有意な関係がないことが分かった。しかし、ビッグファイブ性格検査ではなく、血液型別の性格、特定の固定観念形容詞としての性質を測定した場合には、血液型に応じた性格の有意差があることが分かった。特に4つの血液型の中でも、血液型別の性格特徴の固定観念のレベルが高いA型とB型にあっては、統計的に有意な結果が明らかになった。そして血液型別性格類型の信頼レベルに基づいて集団を分けて比較した結果、信頼性の高い人ほど、血液型別の性格、特定の固定観念に一致する方向に自分の性格を見ている傾向があり、信頼レベルが低い人の場合には、血液型別の性格、特定の固定観念に関する性格を測定した場合には、ビッグファイブと同様に、血液型による有意な性格の違いを示さなかった。これらの結果は、血液型と性格の間に実質的な関係がなくても、血液型と性格についての人が持っている信念が人の思考や行動に影響を及ぼし、実際の自分や他人の評価を変更することもあることを示唆している。これらの結果についての議論と限界、今後の研究のための提言等が示された。
性格検査で定義する「性格」は自己認知の性格ですから、自分自身が「自己認知」している血液型別の性格が検出できないということは、性格検査に欠陥があることになります。
やはり、血液型と性格は、今までの心理学で簡単に分析できるほど甘くはないようです。
先ほど紹介した論文
久保義郎・三宅由起子
血液型と性格の関連についての調査的研究
吉備国際大学研究紀要(社会福祉学部)第21号 p93-100 (2011年)
には、非常に興味をそそる結果も紹介されています。
特に3.は予想していたこととはいえ新発見です!
つまり、血液型の差を感じている人は、人間関係に気を使っている、つまり相手の性格に敏感ということです。
逆に、血液型の差を感じていない人は、相手の性格に鈍感だと…。
この点は、上の Sohyun Cho (2005) さん論文の次の結果とも一致します。
血液型別の性格、特定の固定観念形容詞としての性質を測定した場合には、血液型に応じた性格の有意差があることが分かった。
[血液型別性格類型の]信頼レベルが低い人の場合には、血液型別の性格、特定の固定観念に関する性格を測定した場合には、ビッグファイブと同様に、血液型による有意な性格の違いを示さなかった。
味覚の感じ方は人によって違うことが科学的に明らかにされています。
同様に、個人によって(自己認知も含んで)性格の感じ方には差があり、同じ差でも感じる人と感じない人がいるということになりますよね。
自己認知の性格に頼るパーソナリティ心理学の限界が、現実の血液型に関するデータによって示されたようです。
まぁ、人によって性格の認知が違うということは、驚くようなことではなく極めて常識的な話だと思いますが、既存の心理学にとっては“危険思想”でしょうから、彼(女)らが極めて感情的に(?)血液型に反発するのも、なんとなくわかるような気がします…。
血液型と性格のパイオニアである能見正比古さんは、著書『新・血液型人間学』(角川文庫版116ページ)で、こう述べています。
血液型人間学を従来の性格テストでチェックしたらと言う人がいた。発想が逆である。市販の性格テストの類が、客観性を持っているかどうかを血液型でチェックすべきなのだ。客観的基準は、こちらなのである。
現実の統計データを調べてみると、まさにそのとおりだと言えることになります。
もう一つ、能見正比古さんの言葉を紹介します。私にとっては非常に含蓄のある言葉です。
血液型と性格についてはその後、心にわだかまり続けながら、20年ほどは、進展しなかった。最大の原因は、従来の常識的性格観に、とらわれすぎたせいである。人々はすぐ性格に類型をつくりたがる。私も、O型はこれこれのタイプ……という決め方をしようと焦っていた。そんな類型をつくり得るほど、性格の本質は、とらえられていないのである。さらに日常に使われる性格用語を、それぞれの血液型にあてはめようとしては、失敗した。性格をあらわす言葉と思われているのは、じつは、表面に出た見た目の行動の断片をいうにすぎないものが多い。見た目が静かだったり考えこんだりしていろと内向性、大声で笑ったり騒いだりすると、外向的だなどという、大ざっぱなものが多いのだ。昼寝をしている姿を見て、ライオンは、おとなしい性格というようなものである。そのライオンが、活動を開始すると、今度はびっくりして、ライオンは荒々しい性格という。昼寝のさまも、狩猟のときの獰猛な姿も、共にライオンの性格に根ざしている。その一つだけをとりあげても、全くライオンの性格を示すことには、ならない。
相当な文化人も、こと性格の問題になると、まるで幼稚な観念しか持ち合せていないことが、よくある。大学教授の肩書きの人が、「O型の性格を一口に言って下さい」などと質問してくる。一口に言えるような普遍的総括的、かつ客観性を持った性格用語が開発されていたら苦労はない。多種多様の色彩も、オングストロームという光学上の単位を得て、まずまず統一的に表現できるようになった。人間の性格も、あるいは、キャラクトロームというような単位を作り得て、「O型の性格は80キャラクトローム前後ですよ」と言えるようになるかもしれぬ、ただしそれは、はるかに遠い将来である。(能見正古比 O型は人間は権力志向型なんだって−血液型性格学 別冊宝島6 『性格の本−もうひとりの自分に出会うためのマニュアル』 宝島社 1977.8)
少なくとも、統計データの上では能見正比古さんの「血液型人間学」が正しいことが証明されつつあるようで、私にとってはうれしい限りです。