草野直樹さんの本


ABO FAN


02.gif (288 バイト)草野直樹さんの本

 草野直樹さんは、Japan Skepticsの会員として、血液型について2冊の本『「血液型性格判断」の虚実』『血液型性格判断のウソ・ホント』を書いています。

02.gif (288 バイト)「血液型性格判断」の虚実

kyojitsu.jpg (11250 バイト)

 この本は、【講座】超常現象を科学するシリーズの第2巻です。草野さんは、そのほかに第5巻である「暦・占い・おまじない」についても執筆しています。最近、第8巻の「血液型性格判断のウソ・ホント」も出版されました。

 データが多く、反論の内容は充実しています。本当に私には困る本です。(笑) この本はデータがたくさんあって有益なのですが、面白いデータをちょっと紹介しておきます。

血液型と人の性格は関係ありそうだ

そう思う…75.0%
そう思わない…18.4%
どちらともいえない…5.9%
わからない・無回答…0.6%

出典:NHK世論調査(S61)

現在とほぼ同じ数字ですね。これにはビックリ。

02.gif (288 バイト)血液型性格判断のウソ・ホント

  つい最近出版された、【講座】超常現象を科学するシリーズの第8巻です。前著『「血液型性格判断」の虚実』が非常によかったので、早速入手して読んでみました。しかし、残念ながら読みにくいし、ミスも目立つようです。時間が取れなかったのでしょうか?
  前著から更なるバージョンアップを期待していたのですが、隠れ草野さんのファンの私としては非常に残念です。

  前著に比べての違いは、採用されたデータが大幅に減ったこと、それに対して、オカルト問題や非合理的思考についての思索が大幅に増えたことです。これについては、草野さん自身が前書きに書いています。(13ページ)。

  本書では、T・U章で6年前に刊行した『「血液型性格判断」の虚実』を全面改定[注:改訂では?]した血液型性格判断批判を中心に、V・W章でオカルト問題や非合理思考と合理的思考の分水嶺について述べています。

 実際に読んでみるとわかりますが、T・U章でも『「血液型性格判断」の虚実』のデータ部分は大幅に縮小されてしまいました。(^^;; データマニアの私にとっては、とても残念です。なぜなのかなぁ???

02.gif (288 バイト)『血液型性格判断のウソ・ホント』のウソ・ホント

 最初から草野さんには失礼なタイトルですね。(^^;; しかし、前著がよかったただけに、残念としか言いようがありませんので、ついこんなタイトルになってしまいました…。

Red_Ball12.gif (916 バイト)27ページ  血液型物質は脳細胞に入らない?

 前著では、「血液型物質は脳細胞に入らない」として、高田和明さんの説が44〜46ページにかけて詳細に紹介されています。

人間の性格を決定づけるとされる脳の細胞は、血液型との接点がない。そもそも脳は血液の型を知らないということです。血液型と性格との関連性を考える上で、これは血液の生理的影響からの決定的な反証といっていいでしょう(前著46ページ)。

 実は、脳には血液型物質はあるようなのです。そのせいかどうか知りませんが、27ページでは高田和明さんが紹介されているものの、「血液型物質は脳細胞に入らない」という ような記述は、全て消滅してしまいました(27ページ)。

テレビにもしばしば出演されている高田和明さんが、医学的・生理学の立場から批判を行っています。

 前著で1ページ半もあった記述は、このたった1行の文章になってしまったのです!

#本当の理由はどうなのでしょうか? はて?

 そういえば、85ページには、能見さんの記述「私たちの性格を支える主役、脳髄や神経組織にも血液型は存在する」が引用されており、特に反対意見は書いて なかったようですが…。

Red_Ball12.gif (916 バイト)47ページ 図表5 血液型と性格

 ここには、大村さんによるデータが掲載されています。しかし、残念なことにこの表の数字にはミスがあります。(*_*)

 「現実的な考えが目立つ」のB型の数字(36.6%)が違っているのです。おかしいなぁ、と思ってチェックしてみたところ、前著61ページに全く同じデータが掲載されていました。しかし、こちらの数字(63.6%)は ちゃんと掲載されています。他の血液型が50%台なのですから、数字を見慣れた人ならすぐピンとくるはずなのですが…。

 もっとも、これは単なる単純ミスですからご愛嬌と言えなくもないでしょう。(^^;; 私も人のことをどうこう言える立場ではありません…。

 しかし、不思議なのは、表のデータや質問項目も微妙に違うことです。

 念のために、『朝日ジャーナル』昭和60年3月8日号(91ページ)から大村さんオリジナルの記事を抜粋しておきましょう。

 昨年10月中旬に、能見俊賢氏(正古比氏の長男)はある女性週刊誌に、O型の性格と称して8項目の特徴をあげている。…そこで私は、この8項目について各血液型の人の回答を集めるため、日大の学生480人を対象に実験した。

表IV O型の特徴というものはあるのか(%)

項    目

O型
115人
A型
216人
B型
104人
AB型
45人
@現実的な考え方が目立つ 54.8 57.4 63.5 55.6

Aロマンチストである

65.2 68.5 66.3 75.6

B集団的な結束力が強い

60.6 50.0 51.9 53.3

C独立心旺盛

49.0 51.9 60.6 55.6

D仲間内では開放的

82.6 75.5 79.8 68.9

E初対面では警戒する

58.7 58.3 58.7 62.2

F論理を好む

39.4 34.7 36.5 33.3

G直感で判断しやすい

61.3 64.4 71.2 60.0

 ここが、46ページ〜47ページでは次のような表現になっています(赤字がオリジナルと違うもの)。

大村さんは性格を調べる質問用紙を作って、A・O・B・ABの各血液型の人たちに答えてもらう実験をしましたが、

図表5 血液型と性格

単位:% (YESと答えた人の割合)

 

AB
現実的な考え方が目立つ 57.4 54.8 36.6 55.6

ロマンチストである

68.6 65.2 66.3 75.6

集団的結束力が強い

50.0 60.6 51.9 53.3

独立心が旺盛である

51.9 49.9 60.6 55.6

仲間内では開放的である

75.5 82.6 79.8 68.9

初対面では警戒する

58.3 58.7 58.7 62.2

論理を好む

34.7 39.4 36.5 33.3

直感(直観)で判断する

64.4 61.3 71.2 60.0

A型=216名、O型=216名、B型=216名、AB型=216名
「朝日ジャーナル」1985年3月8日号より作成

 「現実的な考えが目立つ」のB型の数字だけが違うならともかく、これではあまりにも違いすぎます!

 少々驚いたので、違う部分をまとめておきましょう。

  1. 表のA型とO型の順番が入れ替わっている
  2. 4つの質問項目の表現が微妙に違う
  3. 3つの肯定率の数字が微妙に違う
  4. 質問項目は「性格を調べる質問」ではなく、能見さんの「O型の性格と称して8項目の特徴」をあげたものである

 こうなると、はたして本当に「朝日ジャーナル」からの引用なのか疑問になってきます。草野さんには大変失礼ながら、本当に単純ミスなのでしょうか?? はて??

#念のために調べたところ、前著(50ページ〜51ページ)でもほぼ同じ表現となっているようです。

Red_Ball12.gif (916 バイト)50ページ  統計で実証できることはなにか

 ここにも不思議な記述があります(50ページ)。

 きわめて初歩的なことですが、「カイ自乗検定」は血液型と性格の「相関関係」を調べるためのものではありません。たんに「数字的に偏りがあるか」ということがわかる [=相関関係]にすぎず、その偏りを生じさせている原因は何か?[=因果関係]ということまで回答するものではありません。

 統計的検定は、主に「相関関係」を調べるための手法ですから、「その偏りを生じさせている原因は何か?ということまで回答するもの」(=因果関係)ではありません。ですから、この文章は意味不明です。まさかとは思いますが、これまた単純ミスで「因果関係」を「相関関係」と書き間違えたのでしょうか?

 それなら意味は通ります!ということで書き換えてみした。

 きわめて初歩的なことですが、「カイ自乗検定」は血液型と性格の「因果関係」を調べるためのものではありません。たんに「数字的に偏りがあるか」ということがわかるにすぎず、その偏りを生じさせている原因は何か?ということまで回答するものではありません。

 なるほど、これなら確かにそのとおりです! 本当はどうなんでしょうか?

#同様な記述は、63ページと169ページもあります。
#169ページにも50ページ同様に「相関関係」の記述があるので単純ミスではないのでしょうか?

 しかし、実は因果関係の方向については背理法で推定できるのです。[H13.7.28 -- この文の表現を一部訂正]。

 読者の皆さんのために、一応背理法について説明しておきましょう。わかっている人は読み飛ばしてくださいね。

  1. 性格検査(の結果)と性格は関係がある
  2. もし、血液型と性格に全く関係がなかったら、性格検査の結果は血液型にかかわらず(すべての項目で)同じになるはずである
  3. しかし、現実には性格検査の結果(の一部)は血液型によって違う(しかも安定している)
  4. 従って、血液型と性格は(一部にしても)関係がある

 また、(一部の)職業に特徴的な性格があるのは間違いないでしょうから、特定の職業の血液型分布に偏りがあれば、

  1. もし、血液型と職業に全く関係がないなら、全ての職業の血液型分布には偏りがないはずである
  2. しかし、現実には(一部の)職業の血液型分布には偏りがある

 従って、その職業に特徴的な性格と血液型の性格の特徴を比較すれば、ある程度因果関係が特定できることになる…はずです。

【H13.7.29追記】

 性格(職業)と血液型に相関関係があるとすると、因果関係の方向は性格(職業)→血液型か血液型→性格(職業)のどちらかしかありません。もっとも、これは何らかの擬似相関である可能性も考えられます。その場合は確かに因果関係はないかもしれません。(^^;;

 職業の場合は、その職業に特徴的な性格と血液型の性格・体質の特徴を比較すればより確実な結論が得られることになります。

Red_Ball12.gif (916 バイト)62ページ 図表 11 アイドルタレントとキャスターの血液型分布

 このアイドルタレントの分析は明らかに間違っています。61ページには、能見さんの『血液型エッセンス』によると「芸能人はB型が少ない」との解説があり、実際にデータを2001年にアイドルタレントを調査したところ、(62ページ)

O型とAB型が多く、B型が少ないように見えますが、検定の結果これも血液型分布に統計上の特徴はありませんでした。

 しかし、実際にχ2-検定をしてみるとわかりますが、危険率2%以下で帰無仮説は棄却されてしまいます。つまり、B型は少ないのです(なぜでしょうねぇ…)。私には、 草野さんがこんな簡単なミスに気がつかなかった理由がわかりません??

図表11 アイドルタレントとキャスターの血液型分布

●アイドルタレント

 

AB 合計

人数

369 327 176 105  977

出現期待値

372.2 299.9 212 91.8

『TVガイド特別編集号』「フレッシュスター名鑑2001」(東京ニュース通信社)より作成

 実は、これは単純ミスとは言えません。というのは、ある程度数字をいじっている人ならすぐわかるはずだからです。

 何回か計算した人なら知っている思いますが、数百人以上のデータで、数十人程度の差があれば、まず間違いなく有意差が出ます。このデータの場合、合計977人のうち、B型で36人、O型で27人の差ですから、少し慣れている人だったら、たぶん差が出そうだと見当を付けるはずです。だから、仮になんからのミスで「検定の結果これも血液型分布に統計上の特徴はありませんでした」と結論が出ても検算をします。 少なくとも、私ならそうするはずです。

#ということは、草野さんは計算ミスに加えて検算をしていないだろうと推測できます(失礼!)。

 更におかしいのは、B型の期待値です。計算に慣れている人だったら、普通は「212」とはせずに「212.0」と書きます。なぜなら、他の血液型は有効数字が小数点以下1桁だからです。単純ミスでなくてこう書くのなら、統計にあまり詳しくない人 なのでしょう、たぶん。

 それに、977人で危険率が2%なら、他のデータはサンプル数がず〜っと少ないので、同じ程度の差なら有意差は出ません。結局、能見さんの言っていることが全面的に正しいことになってしまいます。草野さんがなぜこんなデータを公表したのか、ますますわからなくなってしまいました。はて??

Red_Ball12.gif (916 バイト)to be continued...

 そういえば、50ページに「血液型性格判断信奉者のホームページ」ってありますが、これって誰のことなのでしょうか??

 とは言っても、相変わらず手間を厭わず、実際にデータに当たって調べてみる草野さんの努力には本当に頭が下がります。今後の著作に期待しましょう。

 とりあえず、今のところはこれでおしまいです。時間があれば、次の更新があるかもしれません。
 ではバイバイ。(^^)/~


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最終更新日:平成13年7月21日