暖かい。
何だかとっても心地いい、この感覚。
あたしが無意識にそこに顔をこすり付けると、ぎゅうって強く抱き寄せられた。
???
「っぎゃあああ!!」
乙女にあるまじき叫び声を上げて、あたしは飛び起きた。
「何、何、いったい!?ってかあんたダレ!?」
も、もしやこれが噂に聞く『行きずりの情事』とかいうものなの!?
み、見知らぬ男があたしのベッドの中にいる…。
見下ろした枕の上に載った顔はぱっちりと目が開いていて、あたしはその瞳に吸い寄せられた。黒じゃなくて、深い紺色。中に小さな星が散ってる。宇宙になんて一生行けないだろうけど、行けたら、もしかしたら、こんな景色が見れるのかもしれない−−−なんて。
それまでじいっとこっちを見ていた男が口を開いた。
「テカスキコスルチチモビュタセキキ?」
「…はい?」
「ラコスダデチョモナラセキフ…?」
「…は?」
「デモスオ!ララビットセオンル…」
「えーっと…スミマセン、私、外国語分かりまセーン」
ちっ
つられて怪しげな日本語になってしまった。
男は眉毛をハの時に下げて、困った顔をしている。
困ってるのはこっちの方だっちゅーの!
誰か通訳連れて来い!
男はキョロキョロと部屋の中を見渡した。あんまり人の家の中じっくり見ないで欲しいんだけども。ここんとこまともに掃除してないし。
ふと机の上のパソコンに目を留めると、目をきらんと輝かせた。おもむろに起き上がってそっちに向かっていく。
「ちょっと、何勝手なこと…」
パソコンを起動させて、ふんふん、と頷きながら、一体何をするのかと思えば。
コイツはあたしが苦労して配線したケーブルを抜いて、コネクタの端っこをパクンと自分の口の中に入れた。