第31回(実のある正義とは)

 クリスがスラスティフム(以下スラス)をドラゴン退治に誘ってみる。
クリス「さっきの人間とエルフの友情の歌は感動したよ。どうだい、次は勇者と英雄の歌を作ってみないか? これから僕らは噂のドラゴン退治に向かおうとしているんだ」
スラス「君は氷の壁は作れるか?」
クリス「いいや、できないな……あんたはできるのか?」
スラス「まあね……ということは、格下の冒険に付き合うことになるのか……それに、一緒に行くなら当然、お宝も分け前を頂くことになるけど?」
クリス「あぁ、もちろん倒せれば分配するさ。どの道ドラゴンを倒せなければ1GPも得られないんだし、皆で分配するのは当然だよ」
ナイン「クリス、彼の名はエルフの中でも高貴な名なのか?」
クリス「さぁ……あんまり聞いたことのない、珍しい名なのは確かだ」
ナイン「ストレートに聞くが、なぜドワーフのことを卑下する歌を歌うんだ?」
スラス「それはドワーフは性格も含めてバランスが悪いからさ。優美でもないし優雅でもない。何よりもあの体型が美しくない。少なくとも彼らは性格的にカタブツ過ぎる、理屈っぽい。例えば魔法で物が動くとしよう、ドワーフはそれに理屈を求める。魔法に理屈を求めてはいけないんだ。君の目玉には見えないだろうが、この世界は魔力に満ち溢れているのさ。その土地とその時の精霊の状態によって魔法は強くも弱くもなる。なぜ魔法が動くのかというのは誰一人として説明などできない」
ナイン「では、鉱夫であるドワーフがあの体型だというのは理屈で説明できんのか?」
スラス「あの体型だから鉱夫にしかなれなかった。地下に潜むなんてダークエルフに近い」
ナイン「姿形だけでいうのならドワーフとダークエルフは同じというのか?」
スラス「まあそういうことさ。中にはドワーフにもいいヤツはいるだろうが、少なくとも私を歓迎してくれたドワーフは少ないね。もう1つ、ドワーフとエルフでは自然と調和する感覚が違う」
ナイン「ドワーフは自然に逆らおうとしているのか?」
スラス「そうではないれど、いまいちドワーフには自然との調和を感じない。もっともそれが全てではないけどね」
ナイン「例えば火山に住む火竜などは自然と調和していると思うか?」
スラス「ああ」
ナイン「ではお前はドラゴンを優雅な生き物だと思うのか?」
スラス「優雅には思うが、私1人でドラゴンに立ち向かおうなどとは思わない」
ナイン「一緒に戦うのはお前だけじゃないぞ?」
スラス「それほど大きくないドラゴンなら君たちでも充分に戦えるだろう」
クリス「え? じゃやっぱり来てくれないの?」
ナイン「お前の歌はとにかく良かったぞ」
スラス「エルフ語が優美に聞こえるということもあるけどね」
ナイン「ならばドワーフを卑下する歌よりも、エルフを高める歌の方がいいんじゃないか? 少なくとも、何かを卑下するよりはよほど優美だろう」
スラス「!…… なるほど、言われて見ればもっともだ。傾聴に値する意見だよ。それよりクリス、君のスペルブックを見せてみなよ」
クリス「えー? ……じゃ、お互いに見せっこするなら」
スラス「ナインよ、君も私の同行を望むのか?」
ナイン「強く望むワケではないが、仲間が多いに越したことはない。ドラゴンの歌を歌うなら実際に見た方がいいぞ」
スラス「それもそうだな……ならば同行しよう。ただし一番前は歩かないよ」
クリス「おぉ! そうか、それは頼もしい!」
ナイン「クリスはドワーフをどう思う?」
クリス「特にドワーフに悪いイメージはないかなぁ……」
スラス「では噂の竜を狩りに行くのだな?」
クリス「スラスは竜について、どのぐらい知っているの?」
スラス「あんまり知りはしないけど……それに、その前にもう1つ厄介なものがあるぞ、ジャイアントも出るのだそうだ」
 といったところで、ミラが合流。
ナイン「巨人とドラゴンは仲が悪いと聞いたが?」
スラス「問題なのはジャイアントがなぜ今のタイミングで降りてきたのか」
ナイン「巨人というのは山に住む巨人なのか? その山は寒いのか?」
スラス「そんなに寒くはないが、普通程度には寒いだろう」
ナイン「そうか。スラス、君から見てその巨人は優雅か?」
スラス「粗野ではあるが力強さは感じるな。あ、直接 見たわけではないが聞いた話では煌びやかな甲冑を着ているみたいだ。まあ金属の鎧と剣を使っているそうだ。だがドラゴンもジャイアントも話が通じる可能性もあるぞ?」
ナイン「そもそもクリス、我々はドラゴンを倒すってことだったか?」(だいぶ酔っ払っている)
クリス「秘宝を探すのに竜退治が必要なんじゃなかったかな……」(少し酔っている)
スラス「(ミラを見て)そうか、教会の者も動き出したということか」
アル「それはどうだかねぇ」
 ナインは酔っ払って寝てしまったのでクリスとアルがナインを担いで、ミラも一緒に部屋に戻る。
クリス「スラス、明日また合流しよう」
スラス「クリス、エルフならば楽器の1つも覚えた方がいいぞ、明日1つやろう」
クリス「た、楽しみにしてるよ」
スラスの装備:エルフの服、エルフの靴、エルフのマント、楽器はリュート(全部ノーマルアイテムで武装はしてない)

 一方、宿の部屋ではファルケとオッティが残っていた。
オッティ「学校を卒業したらグロスターにグラストに来いと言われているの」
ファルケ「……」
オッティ「ファルケ君も帰るんでしょ?」
ファルケ「どうだろうな。帰る理由が無いからな」
オッティ「卒業の報告とかはいいの? まあ、まだ時間はあるもんね」

 翌日は雨。
 この街ではドラゴン退治の募集や依頼は無さそうだ。
 バウマンが荷物の代金を持ってきたのでパーティーが受け取る。
 クリスとナインは他のメンバーにスラスの加入を報告。
ミラ「知らないエルフを加えて大丈夫?」
ナイン「いろいろドラゴンやジャイアントについて知っているようだったぞ」
クリス「自称高レベルで氷の壁の魔法が使えるらしい。今はシャリアもいないし、戦力の補充ってことで」
ミラ「そうなんだ。同行するなら別に構わないけど、命をかけてもらうのは大丈夫なのかしらね」
アル「そもそもドラゴン退治をするのか?」
ミラ「ドラゴンと出会ってしまったら戦うのは覚悟しないとね」
ナイン「我々も使命で動いているわけじゃないしな、ヤバければ撤退すればいい」

 雨が降っているのでこの日1日はこの村で様子を見るということになった。
 クリスはスクロールからファンタズマル・フォースをスペルブックに書き写す(習得!)
 後々グリフォンの幻影を出す時があるかもしれないので、ファルケのグリフォンを観察する。
 ナインはスラスをミラに紹介。ミラとスラスが挨拶を交わす。
 ちなみにスラスはバッチリ武装してきてくれた。そこそこ歴戦の冒険者っぽい感じがする。
 ナインはスラスと模擬戦で手合わせを願い、ファルケとアルがスラスの力量を見てみた。
ナイン「何、ダガーが利かない!? そ、それはエルフのチェインメイルか!?」
スラス「フッ、君には私のミスリルのチェインメイルに傷すら付けることはできないだろう」
アル「スラスの腕は確かですね。少なくとも素人ではないでしょう」
 スラスのウェポンマスタリーはスキルドぐらい(?)のようだった。

 夕方から雨が上がり、夜には星が見えるまでに天候が回復。
 スラスはクリスにカスタネット、アルにはトライアングルを、オッティにはタンバリンを手渡した(他のメンバーは要らないと断った)
スラス「先ずはこれでリズムを覚えるべし」
オッティ「わーい、ありがとう♪」
クリス「あ、ありがとう……」
アル「打楽器、ねえ……」

 翌日、またスラスと合流し聖都を目指すべく出発。
 道中 何もなければ荷馬車の速度で2日ほど行ったところに宿っぽいものはあるようだ。
 クリスは暇な時にカスタネットを叩きながら歩いていく。
 ファルケはグリフォンに乗って飛んでいく。
 しばらく進むと聖都に続く手前の城下街に到着。
 聖都ではダメージ値1d8以上、及びミサイルウェポンは持ち込み不可で、持っていれば預けることになる。
 スラスは何回か聖都には行ったことがあるらしい。
 完全な異教徒(邪悪? 敵対的な?)は入れないが、ミラならば問題なく聖都には入れそうだ。
 ゴーレムシッターといえど、オッティもおそらく問題ないと思われる。

 とりあえず聖都の手前の街で宿を探す。
 雰囲気としては活気のある賑やかな感じだが、少し外れに行くと暗いというか住宅街があるようだ。
 お店がたくさんあり、お守りやおみくじがいっぱい売られている(アルとナインが何やら購入)
 マジックアイテムのショップもある。
・祝福された剣3本
・ヒーリングポーション1ダース+ニュートラライズポーション……5000GP
・ポーション?(Pかも?)……100GP
・ポーション?……500GP
・ラッキーチャーム……500GP
・ぷろてくしょんりんぐ(平仮名で正解)……3000GP
・3レベルまでの各種魔法のスクロール
 ナインは1000GPでヒーリングポーション2本を購入。

 適当に宿屋を見つけてパーティーは自由行動にする。
 宿代は荷馬車に積んである現金から。

 各自で情報収集することに。
アル……10万斤まんじゅうを探しつつ
クリス&ミラ……他の宿をいくつか回る
ナイン&クィス……シーフギルドなどを探す

 ファルケは街には入らず、グリフォンと一緒にいる。スラスは適当にどっかに行くことに。

●銘菓10万斤まんじゅう
 アルが試食すると噂通り『ほどほど』美味しい。
 ファシリアまでの配達はやっていないとのこと。
 まんじゅうの日持ちは10日ぐらい。
 結局アルは買うのをやめ、帰りの道中に買うことにした。
 店の親父に話を聞くが、情報は何も得られなかった。

●ドラゴン情報
 聖都はドラゴンの被害は無い、ドラゴンの警戒すらもしてない。
 シーフギルドからの情報では赤もしくは黒のドラゴンが住み着いたようだ(少なくとも白いドラゴンではない)
 ドラゴンとジャイアントは組んでるとか対立しているとかどちらの情報もある。
 ドラゴンが住んでいると言われているのはレティシア北東とネールラントの国境あたりのザフィーラ山脈の麓あたり。
 レティシアに行けばドラゴン退治の募集が出ているそうだ。
 ドラゴンを後ろからフルボッコにすれば支配できるらしい。
 ドラゴンの1ラウンド目の攻撃はブレスと決まっている。
 ドラゴンが住み着いているのは1箇所。たまに周辺を飛ぶぐらいで他に住み着いているところは無いようだ。
 法王領からの討伐依頼が聖都に来ているようだが一般人には詳細は分からない。

●ジャイアント情報
 因果関係は分からないがドラゴンが住み着いた時と同じくして山からジャイアントが下りてきたらしい。
 出没したのはおそらくフロストジャイアントだろう。
 2ヶ月前にドラゴンとジャイアントの討伐隊が向かったが未だ帰ってこない。

●レティシア情報
 レティシアからドラゴン討伐に向かったパーティーはもういくつかあるようだ。

●聖都自体の情報
 聖都にある図書館は熱心な信者なら利用できそうだ。

●シーフギルドの情報
 情報を仕入れる場合1件につき金貨10枚。
 壁の向こうの地域(貴族領)への通行料は金貨10枚。かわりに支払えば足が付かないように手配してくれるとのこと。
 この街から足跡を消したければ金貨10枚でやってくれる。
 枢機卿(教皇の親衛隊など)とシーフギルドの繋がりはある。お金さえ払えばライコフ卿という人物に紹介するとのこと。
 ギルドが狙っているのはドラゴンやジャイアントではなく例のお宝。
 お宝狙いで大国の人間も向かっているようだ。
 ルクスハウムン家の秘宝の情報を集める際に「旗」という言葉は使わない方が良いらしい。
 ルクスハウムン家の秘宝は何らかの国家的メンツに関わっている代物らしい。

 パーティーはファルケのいる馬車に集合し、お互いの情報を共有した。
 レティシアの首都には寄らず直接 現地に向かうことにする。
 現地に募集が出ていれば、そこに参加して依頼主の話を聞いてみる。

 早速 出発し1日目は特に何も無し。
 途中レティシア領に入り通行料を払う(1人1GP)
 2日目にボーヴェンという村に到着。

ボーヴェンの村
 石造りの外壁に覆われ、村自体が砦のようになっている。
 ボーヴェンの村も被害は無さそうだ。
 村の中央で「冒険者求む!」という演説が聞こえる。
 サフィーラ山脈まではここから2~3日、ここから先は村や町はもう無い。
 我々の他に冒険者っぽいパーティーもいくつか見られる。
 演説している人はエーリッヒ・ルクスハウムンという名で若い男性。
ナイン「あんたの望みは何だ?」
エーリッヒ「先ずはドラゴンとジャイアントを討伐することだ。我が先祖の土地から追い払いたいのだ」
ナイン「それだと我々にメリットは無いのか?」
エーリッヒ「いえ、名誉と称号が手に入ります! さらにドラゴンが集めたお宝はお好きなようにお持ちいただいて結構です」
ミラ「とりあえず皆で話を聞いてみましょうか」
エーリッヒ「おぉ! 女神様! ぜひお願いしたい! 話を聞いてくれるかね?」
ミラ「宿屋にでも場所を移して聞いてみましょう」
エーリッヒ「宿屋ですね、さぁこちらです! この町でも3番目に雅な宿にご案内しましょう!」
 アルがエーリッヒの周囲に集っていた人だかりを見ていると、これらの話を真面目に聞いているツインテールの僧侶がいるのを発見した。
ミラはこの僧侶に見覚えがあり、昔 実家の方で会ったことがあるユーニスという名前(だったような)。
とりあえずミラがユーニスに声をかける。
ミラ「もしドラゴン退治に興味があるなら一緒にどう?」
ユーニス「まぁ竜退治ですね? でも私はここで人を待っているのです」
ミラ「もしかしてヨルグって人だったりしない?」
ユーニス「あぁ確かそんな名前の人だったような……」
ミラ「この前会った時にヨルグさんも例のルクスハウムン家の話に興味があったようだったから」
ユーニス「はい、秘宝が悪しき者に使われやしないかと心配で」
ミラ「そうですか、また何かあったらよろしくね」
 と言うが、結局ユーニスも宿屋についてきた。

 宿屋にて
エーリッヒ「よくぞ皆さん話を聞いてくれました。あなた方が協力してくださればドラゴンもジャイアントも一網打尽でしょう!」
ミラ「まぁまぁ、とりあえず自己紹介ぐらいしましょう」

エーリッヒの情報
 ルクスハウムン家の血を受け継ぐ貧乏貴族。
 この土地に家宝があると聞いて、御家再興を目指し冒険者をしている。
 ちなみにエーリッヒが一行を連れ込んだ宿屋は、エーリッヒの自宅でもあった(笑)

ミラ「あなたがルクスハウムン家の系譜であるという、確かな証はあるの?」
エーリッヒ「えぇ、この宿は私たちに残された最後の財産。そこの壁に我がルクスハウムン家の紋章があります。ではこれから作戦について話しますか!」
ナイン「敵の戦力を把握しているのか?」
エーリッヒ「ま、まずは偵察から行きましょうか」
ナイン「そこからか……」
ミラ「さっき外で見かけたユーニスさんも紹介します。彼女もドラゴン退治には興味があるようですが、私たちと仲間というわけではありません」
エーリッヒ「そうですか、それは心強い」
ユーニス「私も一応は教会からの命がありますから」
ミラ「エーリッヒさん、あなたの立場は? 何かの後ろ盾でもあるの?」
エーリッヒ「いや、特にはない」
ミラ「私たちは冒険者なので依頼があれば受けることもできますが」
ナイン「エーリッヒ、あんたの意気込みがイマイチ伝わってこない。本当に血筋を守りたいのか?」
エーリッヒ「私は自分の血筋というよりも、ここに住む人々を守りたいのだ。我が先祖が開いた土地なのだ」
アル「今はあなたの土地ではないのでしょう? ここの土地の持ち主は何もしていないんですか?」
エーリッヒ「あぁ、村には特に被害が出ていないので何もしていない。しかし私は、少なくともこの辺りの危険を放置できない。この土地での騒ぎを知ってしまった以上は何とかせねば。ドラゴンの宝は全て持っていって構わない。何ならば竜を退治した暁には、その名誉を私は辞退してもいい。もし私が死んだら私の持つデリーシャスな鎧を差し上げてもよい」
ミラ「国の方でも討伐隊を出してたりしたんじゃないの?」
 そこに、それまで黙っていた宿屋の給仕……兼、エーリッヒの執事が割って入ってきた。
執事「坊ちゃん、坊ちゃんの気持ちだけをおっしゃっても伝わらないでしょう。それに彼らとしては他の依頼で竜退治を目指すこともあり得ます。冒険者と坊ちゃんでは立場が違います。まずここはきちんと現状を伝えねばならないでしょう」(執事の名前はエーデス)
エーリッヒ「確かにそうだな」
エーデス「まだ坊ちゃんの中でも整理できていないようですしな。それに戦士が不足しております。この打撃力では難しいかもしれません。彼らの力量もまだ分かりませんし。ましてや準備金をもらって逃げられることもあるでしょう。まぁでも彼らも目的があってここへ来たのでしょう。彼らにもいろいろと他も見てもらって、その上で判断してもらいましょう」

 一方、ファルケがグリフォンと遊んでいると、騎兵の一団が来たのを見つけた。
 逆に騎兵団の方からもファルケが見つかり、弓を撃たれそうになった! 
騎兵「おい、そこのグリフォンの男。ここで何をしている? お前もドラゴン退治か?」
ファルケ「まだドラゴン退治をするかどうか分からんが、とりあえず旅のものだ」
騎兵「そうか、よい旅を」
 騎兵団は12人ほどで過ぎ去っていった。ファルケは騎兵団の鎧に小さなサソリの紋章を目撃した。

 今晩はエーリッヒの宿に泊まることにするが、とりあえず他も回って情報を聞く。
 ナインはエーデスからさらに聞き取りをする。
 アル、クィス、オッティは宿屋で留守番。
 ミラとクリスが外回りで情報を聞きに行く。
 遠話石はナインとクリスにセットされたままなので、ナインに片方を渡しておく。
 ファルケは宿に戻る。

 ミラとクリスは上から2番目にデリシャスな宿屋に行ってみる。
 掲示板にいろいろと張り紙がしてある。
 一番報酬が高いのは竜退治の10000GP(装備準備金有り、竜のお宝は要相談)というのがある。
 真ん中のテーブルに16人ぐらいの一団が陣取っていて食事をしているが、装備はバラバラでただの冒険者集団のようだ。
 ミラが冒険者たちに声をかける。
冒険者「現地に入ったらこんなには食えないだろう。今のうちに食べておけ。もう少し竜のダメージが蓄積されたぐらいに出撃だ」
ミラ「ずいぶんな人数で隊を組んでるわね。竜退治でもするの?」
リーダー「なんだ? お前も加わりたいのか?」
ミラ「いや、こっちももうパーティーは組んでいるの。ただ先に倒されちゃうとねぇ」
リーダー「オレ達はまだ準備中だ。先に行きたいならどうぞ。今回はドラゴンだけじゃなくジャイアントも出るからな」
ミラ「どっかに被害は出ているの?」
リーダー「小隊が襲われたぐらいで村への被害は無いようだ」
ミラ「やっぱりどっかの依頼を受けているの?」
リーダー「あんたらぐらい強そうなら、後ろ盾なんか必要ないかもな」
ミラ「ずいぶん大所帯だけど、前からの仲間なの?」
リーダー「そういうわけではない。それに現地まで全員無事でたどり着けるかどうかもな。本当にドラゴンを倒すなら数は多い方がいい」
ミラ「法王領からの討伐隊がまだ帰ってこないようだけど、何か聞いている?」
リーダー「あぁこの先の村に行っているみたいだぞ」
ミラ「そうなの、じゃお互い気をつけていきましょう」

 クリスはマスターに話を聞く。
クリス「報酬10000GPっていう張り紙の依頼主はどんな人ですかね?」
マスター「よく分からんが商人だ。この村の一番デリーシャスな宿に泊まっているぞ」
ミラ「あそこの大所帯のパーティーは長くここに滞在しているの?」
マスター「そうでもないが、おそらくあの中の3分の2は帰ってこれないだろうな」
クリス「ここの宿に泊まっている依頼主はいますか?」
マスター「いや、誰もいないな」
クリス「そうですか」
ミラ「どうもごちそうさま」

 続いて一番デリーシャスな宿に行く。
 ここの張り紙も同じような感じだがエーリッヒの張り紙は落ちて踏まれてしまっている。
 竜退治以外では山向こうのグラストまでの小隊の護衛の依頼もあった。1人あたり1000GP。
 ここにも中央に騎士っぽい集団がいて、鎧にサソリの紋章がついている。
 他にもパーティーがいくつかおり、酒を飲んでいる。
 ミラは6人組のパーティーに声をかけ話を聞く。
ミラ「あなた達はあの護衛の依頼を受けようとしているの?」
冒険者「あなた誰?」
ミラ「通りすがりの冒険者だけど」
冒険者「まだ契約してないから、やりたいなら先にとってもいいわよ」
ミラ「ちょっと報酬が高くない? 何か裏でもあるのかな?」
冒険者「おそらくフロストジャイアントを退治しろってことだと思うけど、それ以外にも遭遇しちゃったら竜もモンスターも相手にしないといけないからでしょうね」
ミラ「そんなに被害が出ているの?」
冒険者「たまにね。でもやはり被害があるからこそ高額で募集しているんじゃないかしらねぇ。単純にお金目当てで割り切れればいいんだけど命も大事ということで悩んでいるわけ。3匹以上は確実に出るって話よ」
ミラ「そうなんですか、どうもありがとうね」

 クリスはウェイターに話し、報酬10000GPの依頼主を呼んでもらった。
クリス「あそこの張り紙を見たんですが」
依頼主「竜と巨人を倒してルクスハウムンの宝を持ってきてくれ」
ミラ「ということは成功報酬ですか?」
依頼主「あぁそうだ、準備が必要なら1000GPまでなら出せるぞ。さっきもあそこの12人の騎士たちに依頼を出した。10000GPを受け取れるのは1パーティーだけだ」
クリス「秘宝を持ち帰るまでが依頼の内容ですか?」
依頼主「持ち帰れるものならそうだな。だがそうでないなら退治したあと私が出向いていく」

 1人の老人がさっきの6人パーティーに改めて交渉を持ちかけているようだ。
老人「どうですかな? 契約してくれますか?」
リーダー「うーん、まだ考え中よ。こっちにも準備が必要だし、他にもやることもあるの……あと2時間ください。今日中に必ず答えを出します」
老人「そうですか……」
ミラ「ちょっと失礼? いいかしら? あなたが小隊の護衛の依頼主さんですか?」
老人「えぇ、いかにも」
ミラ「ずいぶん破格な報酬だけど?」
老人「実はこの村に住んでいる令嬢がグラストに嫁ぐことになって。日が差し迫っているので、どうにか山を越えたいのです。遅くともあと2日で出発しないと間に合いません。雪も降ってくるし馬車で向かわないといけないし……」
ミラ「なるほど」
 とりあえず他のメンバーに報告しに戻る。

 ナインがエーデスを観察する(探る)
エーデス「坊ちゃん、お気持ちは分かりますが命を大切にしてください。私は今のままでも幸せでございます。私があのようなことを言わなければ……後悔しています」
ナイン「すまないな執事殿」(背後をとる)
 執事は驚いてナインの方に振り向く。
ナイン「エーリッヒは何を守ろうとしているのだ?」
エーデス「坊ちゃんも何を守ろうとしているのか分かっていないかもしれません。これ(家系図)を坊ちゃんが見つけてしまったのです。坊ちゃんは没落したルクスハウムン家の末裔だと気づいたのです。坊ちゃんの父親が博打で失敗し、殺されてしまいました。そして今のようにルクスハウムン家は壊滅状態になりました」
ナイン「ならばルクスハウムン家そのものに何の未練もあるまい」
エーデス「坊ちゃんは正義感の強い方で、この街にくる冒険者に片っ端から声をかけていますが正義感のある冒険者に出会えません。その中で坊ちゃんは自らの出生に気づき、守りたいものはおそらく自分の家の元々の持ち主であったこの土地なのです」
ナイン「だが被害は出てないのだろう?」
エーデス「被害は無いですが、他の者に一族の秘宝を触らせたくないのでしょう。私も他人に家宝を荒らされるのは気持ちいいものではありません」
ナイン「神からの賜り物がドラゴンの持つ宝物と聞くが、なぜ皆あのように血眼になって手に入れたいのだ?」
エーデス「それは伝承によるものでしょう。私も以前は盗賊ギルドに出入りしたこともあります。この国にそのアーティファクトが眠っています。たいそうな物品でございます。それは国の力を左右する強大な力を持つものと言われているのです。ゆえに大国も欲しがっているのです」
ナイン「では秘宝を巡って戦争が起こる可能性もあるのか?」
エーデス「可能性はあります。どんなに強大なものなのか想像もつきませんし」
ナイン「あんたは赤き竜を見たことがあるのか?」
エーデス「見たことはございません。そもそも、ここ最近になって住み着いた竜です。とある地震によって目覚めたというか、こういう騒動に発展しました」
ナイン「そうか、ならドラゴンがたくさんお宝を持っているとは限らないな」
エーデス「確かにそうですね……それとラーデンのエージェントも見ました。あちこちから派遣されているのでしょう」
ナイン「エーリッヒの命を守りたいなら、エーリッヒがこの件をあきらめて欲しいとも思っているのか?」
エーデス「それもあります。坊ちゃんのためなら、できればあなた方には今回の依頼はお断りして頂きたいです」
ナイン「なるほど、仲間にも相談してみよう」

 ミラ&クリスも宿に合流し皆で情報交換。
 ナインとしては、エーリッヒの実のない使命感による竜退治をあきらめさせたい。またルクスハウムンの宝物は、手に入れても国の陰謀に巻き込まれる可能性があり推奨できない。他の冒険に一緒に連れていき、どんなに危険かを知らしめて、エーリッヒ自身の正義感の無鉄砲さを感じてもらうという方針で動くことに。
 ミラとクリスもグラストまでの護衛の方が仕事を受けやすいと判断した。ただしフロストジャイアントが出るのと、雪山を越えなければならない。
 アルは、これまでの情報を合わせ考えるに、ルクスハウムンの宝というのはナインの意見と同様、実在して仮に手に入れられたとしても未だ学生である自分たちでは扱い切れないだろう。そんなものを竜を退治してまで手に入れる必要が今の自分たちにあるとは思えない、それくらいなら女性の幸福な未来のために働きたい、と、やはり令嬢護衛の方に賛成。
 ファルケは、依頼を受ける前に令嬢に会いたいとのこと。
 パーティーの知識としては「ジャイアントは石を投げてくる」というぐらいしか知らない。
 一番デリシャスな宿屋に戻り、護衛の仕事を引き受けると伝えた。依頼主の老人の名前はリーベック。
リーベック「これはこれは先ほどの。引き受けて頂けるのでしょうか?」
ミラ「ちょっと条件があるのですが。先ずは守るべきお嬢さんに会いたいと仲間が言っております」
リーベック「えぇ、それは大丈夫です。ただ1つだけ心配なのがお嬢様を見て仲間の方が心を奪われてしまうのではないかと」
ミラ「あ、それは心配しないでいいと思うわ」
リーベック「それならば。では明朝にでも出発したいのですが、後ほど夜のうちに屋敷に方に来て頂けますか?」
ミラ「分かりました」

 一行はエーリッヒの宿に戻りナインがエーリッヒを護衛の仕事に誘う。
ナイン「エーリッヒ殿、困った民を助けたいのが望みなのだろう?」
エーリッヒ「えぇ」
ナイン「ならばその正義を護衛の仕事に費やそうではないか」
エーリッヒ「護衛? それのどこが正義なのだ?」
ナイン「護衛のどこが正義ではないのだ?」
エーリッヒ「……どんな護衛なのだ?」
ミラ「グラストに嫁ぐ令嬢さんの護衛よ」
エーリッヒ「あぁ、タリマの護衛……やっぱりあの騎士か。タリマは妹のような存在だった」
アル「じゃあ、その人を護衛するのは正義なんじゃない?」
エーリッヒ「彼女が幸せになるなら……この命をかけよう。私も共に行こう」
ミラ「スラスはどうする?」
スラス「竜退治じゃなくなったのか……ならば護衛の仕事には行かず竜の方の偵察でもしていよう。クリス、それでいいか?」
クリス「そうだね、そのあと竜退治の方もやるかもしれないから後日また合流しよう」
ナイン「クィス、お前も残れ。我々が戻るまでエーデス殿を守るのだ」
 常にナインの言葉に恭順するクィスだったが、この言葉には反発を示した。
クィス「何故だ。私はお前と一緒に行きたい。いつも一緒がいい」
ナイン「この宿とエーデス殿を守るのも大切な仕事だ」
クィス「……それは命令か?」
ナイン「(少し考えてから)命令だ」
クィス「……わかった。命令なら従おう」

 クリスは宿に残り先に寝る。他のメンバーは夜のうちに令嬢に会いに向かった。
 タリマはグラスト人で、黒髪、青瞳の美人。
 エーリッヒがタリマと挨拶を交わすが、タリマはエーリッヒを見るや不安がる。
タリマ「エーリッヒ、あなたは勝手に出て行ったわよね。そんなあなたが護衛なんて大丈夫かしら?」
エーリッヒ「僕もだいぶ修行を積んだよ」
 タリマはマゼルホープ村のトッペンハイマー家というグラストの騎士に嫁ぐとのこと。
ファルケ「タリマ、これはあなたが望む結婚ですか? 政略結婚ではなく?」
タリマ「私はグラストで幸せになります……」
 タリマのその言葉に、エーリッヒはそっぽを向いた。
タリマ「護衛の皆さん、他に質問はありますか? 無ければ明日はよろしくお願いします」
リーベック「もうすぐ雪も強くなりそうですな。ではそろそ準備しましょう」

翌朝
 オッティの魔法:スリープ、ウェブx2、ディスペルマジック
 クリスの魔法:マジックミサイルx2、ミラーイメージ、インビジビリティ、ヘイスト、ヘイスト&ファイアボール(リング)
 エーリッヒがパーティーの馬車を操縦してくれることに。

 街を出てしばらくすると道がだんだん上り坂になってきて雪虫が飛び始めた。
 何事もなく麓の村(宿?)に到着。今日はここで一泊する。
 宿にはケガ人や大破した馬車などが結構いる。
 話を聞くとフロストジャイアントにやられたようだ。
ミラ「あなたたちはグラスト側の人? 山を越えてきたの?」
商人「グラスト人だ。6台の馬車で来たのだが5台がやられてしまったよ……山の渓谷で石が降ってきて平原で挟み撃ちにあった。非常にデカい剣を持ったジャイアントもいた。3匹ぐらいジャイアントがいたぞ。あとオオカミもいた。アレはやばい。護衛に雇った冒険者は全滅してしまうし、オレはもう廃業だな……」
ミラ「ここからどれぐらいのところ?」
商人「2~3日行ったところだ。森の中でオオカミに追われて、逃げた先で石が降ってきて、さらに平原まで逃げたら挟み撃ちってわけよ。あんたらも気をつけな。あとはジャイアントには部下みたいなのもいたぞ、とにかく厄介だ。あれはスノーオーガだろうな。こっち側から行くなら地形は平原、渓谷、森の順になるかな」

 翌朝、クリスは魔法を入れ替えた。
クリスの魔法:マジックミサイルx2、レビテイト、インビジビリティ、ファイアボール、ヘイスト&ファイアボール(リング)

 雪が降ってきて、だいぶ視界が悪くなってきた。
 ファルケが上空から偵察しつつ進んでいき、しばらくすると数百メートル先に煙が見えた。
 近づくと馬車が1台燃えていて、オオカミの遠吠えのような声が聞こえ始めた!

経験点:なし
終了時のゲーム時間:1994/12/24