第7回(番外編・「その柱には秘密がいっぱいなりよターマイト」)
 今回は番外編ということで、クレイやクラウスがLv1だった頃の話。
 ビニスティは当時この国にはいないので、ヴァルラモヴィチという名のドワーフが加わっている。
(他のキャラクターはプレイヤーが欠席のため登場せず)

 場所はゼーレ王国の南にあるトムスという港町。
 水運業が盛んな街で、絹、食料、武具、宝石などが活発に往来している。
 船乗りたちも休憩に立ち寄り、非常に賑やかな様子の街。
 レッドドラゴンクラッシュという酒が名産品で有名らしい。
 ここでは荷物運び、街の警備、護衛など仕事がたくさんあるという話を聞きパーティーは街にやってきた。
 噂ではこの街はケイオティックな盗賊ギルドが裏で牛耳っているらしい。

 パーティーは仕事を探しに役場に向いリストを見せてもらった。
・荷物の積み下ろし(日当5GP)
・下水道の大ネズミ退治(退治したら25GP)
・港の倉庫の警備(昼間1週間7GP、夜間1週間70GP)
 いずれも依頼人はカッシイム伍長とのこと。
クレイ「夜間の警備が異常に高いのはどうしてですか?」
役人「盗賊ギルドとのいざこざに巻き込まれるかもしれない危険性があるためです。ただし悪人の盗賊をひっとらえたら追加報酬を出しますよ」
ヴァル「ということは、役場としては盗賊ギルドに手を焼いておると?」
役人「うーん、持ちつ持たれつといったところですかね」
クレイ「倉庫の警備というのは、盗賊が盗みに入るかもしれないということですか?」
役人「それも含まれますね」
ヴァル「じゃー、ネズミ退治がいいかのう。着いて早々、盗賊ギルドと事を構えるっつーのはゾッとせん話だわな」
役人「そういえば、なんとかっていう虫が沸くんです。名前は確か……なんとかっていう虫です。詳しくはカッシイム伍長に聞いてみてください」
ヴァル「では話だけでも聞いてみるかの」

 カッシイム伍長は、サカサゴマ亭という酒場にいるとのことでさっそく向かう。
ヴァル「宿に手ぶらで入るわけにはいかんな。まずは飲み物をと」
クレイ「マスター、カッシイム伍長はどちらへ?」
マスター「あっちだよ」
と、奥で部下を引き連れてガッハッハガッハッハと飲んでいる隊長らしき男がいる。
ヴァル「うむ、仕事のあとの宴会中に仕事の話とは言いだしにくいのう。明日の朝に聞きに行くというのも手かの」
クレイ「そうだな、明日の朝にするか」
ヴァル「近くに安い宿はあるかの?」
マスター「リバーサイドインという宿があるぞ」
ヴァル「うう、川の近くは苦手じゃの。他の宿はあるかな?」
マスター「ここなら一泊2GPで今なら空きもあるぞ。大部屋なら1GPでいいが」
ヴァル「もう移動するのも面倒だし、ここに泊まるかの。寝る前に気付けの一杯ももらおう」
店員「レッドドラゴンクラッシュはいかがですか? お代はツケでもいいですよ?」
ヴァル「飲みたいが……今回は普通の酒で我慢しよう(お酒を飲む飲まないの誘惑判定に成功w)」

 朝になり、財布もちゃんとあることを確認して一安心する。
 詰所の伍長のところへ虫の話を聞きに行く。
衛兵「カッシイム伍長は隊長特権で午後出勤であります」
ヴァル「昨日の酒で潰れたのかの?」
衛兵「い、いえ、隊長特権としか言えません。ランチのあとに出勤されるかと思われます」
ヴァル「では出直すかのぉ」
 宿に戻り時間を潰し、再び詰所に。
 門に身なりの良さそうな先客がきている。
ヴァル「わしらも虫の話を聞きに来たのじゃが、今の人は時間かかりそうか?」
門番「ニコラム様ですね、おそらく我々に依頼に来たのでしょう。ちょっと時間かかるかもしれません」
ヴァル「虫退治についてカッシイム殿に伝えてもらえましたかの?」
門番「えぇ、話はしてあります」
クラウス「詰所の見学でもして待つか」
クレイ「中で待たせてもらってもいいか?」
門番「ええ、構いませんよ」
小一時間ほどすると、門番の1人がやってきた。
門番「お待たせしました。伍長がお呼びです」
カッシイム「虫の話ということだったな?」
ヴァル「大量の虫というのは何ですかな?」
カッシイム「ターマイトという虫をご存じかな? やつらは川からやってくる。腹を膨らませて泳いでやってきては、倉庫の柱をかじって破壊してしまう。一体何のために破壊しているのか……巣でも作ろうというのか。先ほどニコラム商会のニコラスさんがやってきて、彼らの倉庫もアリに食われているそうで退治の依頼に来た」
クレイ「ターマイトは蟻なんですか?」
カッシイム「正確にはウォーターターマイト、簡単に言うと水白アリだな。なぁに1匹1匹はゴブリンほどの強さだ。報酬は1日15GPで最低1週間の契約でどうだね? さらにアリの元を辿り、根絶してくれたなら1人100GP追加だ」
クレイ「毎日襲ってくるのですか?」
カッシイム「最近増えてきている。3日に1回ぐらいのペースで3~6匹ほどだ」
クレイ「今まではどうやって退治してたんですか?」
カッシイム「陸に上がってきたのを倒していた。それと、尻から墨を出す。まともに受けると麻痺してしまうから気を付けろ。体長は1.5mほどだ」
クレイ「弱点はあるんですか?」
カッシイム「しょせん虫だ、特殊な戦術などは使ってこず、前に進むしか能がない。だが甲虫のために固い。チェインメイルより固いぞ」
クレイ「特定の倉庫だけ襲われているのですか? それともいろいろな倉庫が被害に遭っているのですか?」
カッシイム「水辺から一番近いからかもしれんが、ニコラム商会の倉庫が最も被害に遭っている」
クレイ「では、巣穴を見つけて元を断つまでやるか」

 ということで、さっそく今晩から見張りをする。
 日当なので、毎日報酬が支払われる。
 24時間の警備なのでクレイ、クラウス、ヴァルラモヴィチが3交代で見張る。
 倉庫前で見張りをしていると、お腹を空かせた子供がやってきた。
子供「僕はみなしごチャーリーさ。お腹が空いたよ~、何か食べ物をちょうだい。パンでもビスケットでもステーキでも」
ヴァル「今日だけはやるが、もう次からは何もやらんぞ」
チャーリー「おじさん、ありがとう! 僕を覚えておいてね!」
と逃げていき、ヴァルラモヴィチは財布を盗まれてしまった……
そうこうしているとカッシイム伍長がやってきた。
カッシイム「見張りの様子はどうかね?」
ヴァル「チャーリーとかいう子供に財布をやられてしもうたわい」
カッシイム「あぁ、あの子か……気を付けることだ。財布は預けておくことだな」
ヴァル「その盗人以外はまだ見えませんな」
カッシイム「そうか、今夜は冷えるから気を付けてな」
部下「あ、隊長! あれは!?」
カッシイム「むむ! 白アリが現れたな!」
ヴァル「あれが例の虫じゃな!」
カッシイム「では君の腕前を拝見させてもらおう」
 ヴァルラモヴィチとターマイト5匹が戦闘に突入!
 カッシイムの部下が倉庫内のクレイとクラウスを起こしにいき、戦闘に加勢する。
 ターマイトは固く、なかなか攻撃が命中しない!
 倉庫の柱は少しカジられてしまったが、どうにか5匹を討伐。
 この場でカッシイムは報酬を支払った。

 翌日、身なりのいい人がやってきて柱を見ている。
クレイ「この倉庫の商会の人か?」
「あなた方が警備をなさってくれているのですか? この柱が折れてしまうと、この倉庫も終わりです。私たちの倉庫が無くなってしまう。どうか守ってください」
クレイ「補強に使えそうな木材はないか?」
「探してきましょう」
クレイ「この柱は特殊な木なのか?」
「特殊というか頑丈な木です」
クラウス「虫を1匹捕まえて、逃がしつつ追跡して巣を探そう」
クレイ「どうやって捕まえる?」
クラウス「ネットで捕まえて、ロープをくくりつけて追いかけよう」
クレイ「そうしよう、では商会の方、ネットと補強のための木材を持ってきていただけるかな?」

 木材とネットが届き、夕方にチャーリーとカッシイムがやってきた。
チャーリー「隊長さん、ご機嫌うるわしゅう(隊長の腰から酒瓶を盗んで逃げようとする)」
カッシイム「貴様、えい!(武器で突こうとする)」
クレイ「子供が酒なんか飲んじゃダメだぞ(捕まえた)」
カッシイムの突き出した槍も避けつつチャーリーを抱えると、チャーリーは酒瓶を落とし割れてしまった。
カッシイム「私の酒を……」
クレイ「小僧、謝れ」
チャーリー「ごめんなさい! もう何も盗みません! ごめんなさい!」
カッシイム「今回だけだぞ、次からはひっ捕まえてやる!」
チャーリー「ごめんなさい!」
クレイ「日が暮れたらまたアリが来るかもしれないから、さぁもう行け」
 カッシイムは地面にこぼれた酒を足で踏みにじって帰っていった。
 ネットとエサの準備をしてまた見張るが、この夜は虫は来なかった。

 翌朝、部下が日当を持ってきて、昨日の割れた酒瓶の片付けをして帰る。
 すると、またチャーリーがやってきた。
チャーリー「昨日のお礼を持ってきたんだ、盗んだ15GPを返しに来た。このお金で何をするの?」
ヴァル「むろん、今回の件を片付けて懐を暖めた後、レッドドラゴンクラッシュを飲むんじゃよ」
チャーリー「緑色のお酒だね?」
ヴァル「色までは知らんがね。隊長はあの酒を気に入ってるが、足蹴にしているところも見た。何か心当たりはあるかの?」
チャーリー「心当たりはない。でも僕もこの柱を守らないといけないんだ」
ヴァル「どうして?」
チャーリー「教えられないね」
ヴァル「ならクレイにはどうじゃ。助けてもらったお返しとして?」
チャーリー「僕はみなしごチャーリー、義理堅きチャーリーではないよ。どうだいお兄さん、共同戦線を張らないか?」
クレイ「どんな?」
チャーリー「お兄さんたちがこの柱を守る仕事をしているのは知っている。白アリの情報を共有しない? 1つでもいいから情報を売ってほしい」
ヴァル「昨日の割れた瓶の破片は兵士が回収してしまったぞ、何かの手がかりになったかもしらんな。カッシイム伍長は怪しいかね?」
チャーリー「どうかな」
クレイ「君は毎日この柱を見に来ているのかい?」
チャーリー「僕は柱を守るように言われているんだけど、僕の組織が守りたいのは柱じゃないと思うよ」
 クレイは倉庫の中には何があるのかを調べてみた。
 見て分かる範囲だと、ところどころに四角い石の土台のようなものがある。
 以前にあった柱の跡の土台と思われる。さらに石畳になっている床に色の違うような石があるが、触っても分からなかった。
 今晩はクレイとクラウスは柱を守りながら外で寝ることにした。
 すると川に船が流れてきて、謎のローブ姿の者が乗っている。と同時にターマイトの軍団も出現! 
ヴァル「そこの夜釣りの方、アリのモンスターが出現じゃ! 気を付けろ! 向うへ行け!」
ローブの男「ひ~! ひ~!」
 戦闘に突入し、ヴァルラモヴィチがアリにやられてしまった! (デスレイ判定も失敗して死亡!)
 クレイが何度もトライし、ようやく1匹にネットをかけて捕獲成功!
 クラウスが次々にターマイトを撃破し戦闘終了!
 チャーリーがやってきてヴァルラモヴィチの死を悲しんだ。
 
クラウス「ターマイトを1匹捕まえたぜ。追跡しよう」
チャーリー「これなら追跡できますね、僕に任せて。では交換にポーションを2本お渡ししましょう」
クラウス「ターマイトは何でも木を食べるんじゃないのか? なのにこの柱のみを食べに来たぞ」
チャーリー「この柱は普通の柱です。これは断言します」
クラウス「隊長の行動が怪しいから待っていたんだが来なかったな」
チャーリー「代わりに来た人はいましたか?」
クラウス「怪しい釣り人が来たな」
チャーリー「そっちは僕が調べてみます」
クラウス「ターマイトを組織に連れていくか?」
チャーリー「ターマイトは放って追うしかないですね。それとドワーフさんにはレッドドラオンクラッシュを弔いにおごります。そしてドワーフは黄金が好きだと聞いています。このご遺体は柱の下に弔いましょう」
クラウス&クレイ「……ん? 今なんて?」
チャーリー「それは……察してください」
クラウス「レッドドラゴンクラッシュって緑色の酒なのか?」
チャーリー「いえ、琥珀色のお酒です」
クラウス「緑の酒なんてあるのか?」
チャーリー「いえ、ありませんね」
クラウス「だったら伍長が飲んでたのは何だ?」
クレイ「確かにあの酒は緑だったな」
部下「おーい、今日の日当を持ってきたぞ。ドワーフが犠牲になってしまったか」
クレイ「補充メンバーを手配できますか?」
部下「ハーフリングの者なら用意できるが良いかな?」
クレイ「はい、構いません。よろしくお願いします」
クラウス「今日は、隊長は見回りに来るか?」
部下「隊長は本日も午後出勤です」

 昼間のうちに柱を補強し、再びチャーリーがやってきた。
チャーリー「追跡した結果をお知らせします。川向うにある古い水車小屋のあたりが巣のようです。隊長の飲んでいた緑の酒は魔術師ギルドに鑑定を依頼しました。ウォーターターマイトの巣は古くから存在したようです。今まで何事も無かったのになぜ今この時期にここを襲うのか……」
クラウス「隊長の酒を手に入れたいな。原因もつかめるかもしれない。戦闘のどさくさに紛れて隊長にネットをかけ、酒瓶を奪って少しばかり水袋に頂いて鑑定に回そう」
チャーリー「ネットなら用意できます」
クラウス「よろしく頼む」

 夜、ドワーフの悲報を聞きつけ伍長がハーフリングを連れてきた。
ハーフリング「増員係の可憐なハーフリング、エルビラちゃんだよ~。二人ともよろしくね~」
 伍長は酔っていて、やはり緑色の酒を持っているようだ。
クラウス「伍長殿、弔いの酒をオレにもくれよ」
カッシイム「この酒は高いんだ。それに君らは勤務中だろう?」
クラウス「今日はターマイトは襲ってきますかね?」
部下「た、隊長! あれを!」
 と、今夜もターマイト軍団が登場。
 クラウスとクレイは戦闘中に例のカッシイム捕獲作戦を決行しようと合図した。
 エルビラはいきなり中距離射撃でターマイト1匹をクリティカルで落とす! こいつは腕利きだ! ……と一同に思わせた次のラウンド、1出して行動不能に(笑)
 クラウスが気づき、伍長は何やらジェスチャーで指示を出しているような動きをしている!
 クラウスはターマイトに投げるフリをして伍長をネットで捕獲! 同時にターマイトの動きが変わった! 
カッシイム「な、なにをする!?」
クラウス「かかったな! お前が酒を飲んで操ってただろ! その酒をよこせ! さぁチャーリー出てこい!」
チャーリー「それなら酒を飲んでみては?」
クラウス「おお、そうか(緑の酒を飲んで)さぁターマイト撤収しろ! そしてあの船を襲え!」
クラウスの指示通りターマイトが動きを変えた!
クラウス「やはりな! あの船の男がターマイトを連れてきて、伍長とやらが操ってたか!」
ローブの男「降参だ! 降参だ!」
クラウス「素直に従わないとターマイトの麻痺で襲うぞ」
カッシイム「くっ、お前たちも黄金がほしくなったか」
チャーリー「なぜ隊長が黄金のことを知っているのですか? 知っているのは組織の人間のみのはず」
カッシイム「……」
チャーリー「そして私たちの組織のアジトは、以前この倉庫の場所にあったんです。それがあるときアジトが火事になりました。我々は財宝を残したまま命からがら逃げねばなりませんでした。……僕の両親を拷問して殺したのは貴方ですね? 黄金のありかを聞き出して殺しましたねカッシイムさん!?」
カッシイム「この黄金はお前たちが持ているより、街のために使う方がどんなに役立つか」
チャーリー「いえ、この黄金はあなたたちが不正に徴収したお金でしょ!」
カッシイム「街の運営には汚れた金も必要だろ」
チャーリー「とにかく両親の仇を討ちます!」
クラウス「待て、個人の恨みを晴らすより、お前の両親が望んだように伍長を捕えて街の税金を軽減するとか、街全体のためにしたらどうだ?」
チャーリー「……そんなことは仇をとってからでもできる!」
エルビラ「そんなことをしたら人殺しになるぞー?」
チャーリー「1人も殺せないでこんな仕事はできない(と言いつつも手がとまった)」
部下「まさか……隊長が……そんな……」
チャーリー「僕は黄金よりも、父さんと母さんを……」
エルビラ「今からすっげー使い古された陳腐な言葉吐くぞ! 心食いしばれぇ! それで、両親は帰ってくるのか?
クラウス「そこの部下、お前も軍人なら正しく行動しろ」
部下「隊長……あなたは現行犯です。観念してください。みなさんには報酬はしっかりお支払いします」
カッシイム「くそっ、ここまでか……」
クラウス「あのローブの男も連行してくれ」
 ターマイトたちは巣に帰っていった。

 後に鑑定したら、緑の酒はバグコントロールポーションだったと分かった。
 3D6までの昆虫なら何でもコントロールできるとのことでクラウスが所有することに。
チャーリー「残念ながらあなた方に黄金は差し上げられませんが、お渡ししたポーションはお使いください。カッシイム……並び変えると "ムシツカイ(虫使い)" ということもわかりました」
エルビラ「(……そりゃー異世界の言葉でのアナログであって、この世界の言葉でそうなるとは限らないんじゃないかなー、という心の声)」
 クラウスは今回の一連の戦闘で飛び道具の重要性を感じた。
 クレイはヴァルラモヴィチのバトルアックスを形見として所有することにした。

残りの報酬は1人160GP
経験点:500