ザリガニの脱皮と成長促進
日本ザリガニ研究所



[ 歩脚(胸脚)の自切]

 アメリカザリガニ Procambarus clarkii の幼若個体の歩脚を2〜6脚自切させると、自切させた脚の数に応じて脱皮が促進する。実験条件やザリガニの成長段階にもよるが、体長3cm以下の個体であれば脱皮間隔が20%位短縮する。脚自切後、2回脱皮すると脚は再生してほぼ元の大きさになるから、さらに続ける場合は2回目の脱皮後に再度自切させる。
 脚自切で脱皮は促進するが、脱皮毎の体の伸長率は無傷の個体より小さいので、成長はほとんど促進しない。自切した脚の再生にエネルギーを費やすためであろう。

[自切 ]

 自切とは、この場合、ザリガニが脚を自ら切り落とすこと。脚を自切させるためには、脚の一部をピンセットなどで挟んでつぶすとザリガニは、その脚を根元(基節)にある自切面から切り落とす。トカゲが尾を自切するのと同様である。自切ではなく、脚を鋏などで根元から切り落とすと、切り口から体液が流失してザリガニが死ぬ場合が多い。自切であれば、体液の流失はない。

 
  第2ハサミ脚(第2胸脚)各節の名称
 注) ハサミの先端側を日本での解剖学用語では、可動指 movable finger、不動指 unmovable finnger、と呼ばれているが、外国の研究者達は、これらを finger と呼ぶのは不適切と言っており、それぞれ dacty、polex と呼んでいる。

[眼柄切除 ]

 甲殻類の眼柄を両方とも根元から切除すると脱皮と成長が促進する。眼柄を切除するときのザリガニの体長が3cm以下であれば、眼柄除去で脱皮間隔は約4分の1に短縮し、脱皮毎の体の伸長率は約2倍になった。ようするに、成長率は8〜10倍になる。
 
注)これは、研究室内で飼育した場合であり、飼育の仕方や屋外の池などで飼育した場合は、結果に多少の相違はあるであろう。
 下の写真の例は、小さく写っている4個体は成体である。大きな個体は、他の4個体と同じ大きさの時に、両方の眼柄を切除した。眼柄切除個体は、切除後17、24、30日の間隔でそれぞれ第1、2、3回目の脱皮をした。写真は、3回目の脱皮後に撮影した。この間、他の4個体は、いずれも1度も脱皮しなかった。普通、成体は1年に1度位しか脱皮しない。
 成体は、眼柄を切除しない個体でも、ハサミが相対的に大きく、脱皮のときにハサミの殻を脱ぐのに失敗して死ぬことがおおい。そのため、成体の眼柄を切除するときに、第1鋏脚(第1胸脚)を自切させた。眼柄除去個体のハサミ脚が充分な大きさに再生していない。ハサミ脚が体相応の大きさに再生すると、眼柄除去個体は、さらに大きく感じられるであろう。


[なぜ、眼柄除去で脱皮と成長がはやくなる?]

 眼柄内には、サイナス腺がある。サイナス腺は、ホルモン産生器官ではないが、他の器官が生産したホルモンを貯めておき、必要に応じて再分泌していることが知られている。眼柄除去の結果から、サイナス腺から再分泌されているホルモンは成長促進ホルモンであると考えられる。眼柄にあるサイナス腺は、甲殻類の成長を抑制的に調節していると考えることができる。眼柄切除により、この調節機構が無くなるので成長がはやくなると考えられる。成長を促進させるホルモンは、大顎腺でつくられていることが知られており、ファルネソルと言われている。実際に、眼柄を切除すると大顎腺が発達する。


ザリガニに関するメニュー
日本語のトップページ
Top page