アメリカザリガニについて
日本ザリガニ研究所


  学名:Procambarus clarkii Girard
  和名:アメリカザリガニ
  英名:Red crayfish  または Red swamp crayfish

           (原産地のルイジアナでは、crayfishcrawfishと呼んでいる。Red crawfish または Red swamp crawfish)

注)種名は動物も植物も生物学では、カタカナで表示することになっている。日本ザリガニ研究所は、ニホンザリガニの研究所ではありません。

このページに記載した項目
 ・アメリカザリガニは外来生物
 ・なぜ、和名はアメリカザリガニ?
 ・英名のRed swamp crayfishについて
 ・アメリカザリガニは繁殖力が強い?
 ・成長に要する期間は

 ・アメリカザリガニの天敵
 ・なぜ、ザリガニは後ろへ進む?
 ・尾扇
 ・個体によって個性はまちまち
 ・ザリガニにはさまれたら
 ・アメリカザリガニが繁殖した地域では、ニホンザリガニが駆逐されたとの考えもあるようだが、本当か?
 ・ザリガニ釣り
 ・クリップでも釣れる?
 ・ザリガニ釣りは何時がよい?
 ・アメリカザリガニがいる沼や池の水は濁っている
 ・釣れるのは大きなザリガニが先
 ・脱皮は何時する?
 ・脱皮
 ・ザリガニとカニとの違い


アメリカザリガニは外来生物

 アメリカザリガニは外来種である。これが日本の自然界で繁殖することは学術的に問題であり、稲作耕作者や養魚者などにもきわめて迷惑なことである。環境省は、アメリカザリガニを要注意外来生物としている。アメリカザリガニに興味を持つことはよいが、ペットなどで入手したものを自然に放すことは絶対にしてはいけない。このようなマナーを厳守しなければ、特定外来生物に指定されてペットとして飼育できなくなることがある。
 
山形県内でザリガニは、非常に少なくなったが、私の近くのU字溝で見かける。普通、U字溝はザリガニの棲息に適さない。上流のどこかにザリガニが生息しているのだろう。現時点(平成18年)では、水系や距離的にも決して白山ザリガニクラブの池(周囲はトタンで囲ってある)から逃げ出したものとは考えられない。私の所から逃げ出したのではと考える人もいるようだが、これも違う。私は、屋外では白いザリガニ以外は飼育していない。
 
平成20年6月、子供達がこのU字溝からザリガニを沢山捕まえているので、調べてみた。その結果、下の写真のように側溝の壁面に穴をあけてあるので、ザリガニはこの穴を巣穴として殖えていることが明らかになった。
  
 コンクリートの側溝では、アメリカザリガニは繁殖できない。しかし、右の写真のようにザリガニが棲息していた。
  
 側溝の壁面に穴があけられていた。写真右:右の穴はザリガニが巣にしている穴である(ザリガニが運び出した泥が穴の所に堆積している)。このU字溝には、このような間隔で穴があけられている。ザリガニにとっては、格好の巣穴である。写真右下の左の穴は巣にしていない。

◎なぜ、和名はアメリカザリガニ?

 このザリガニは、約80年前にアメリカのニューオリンズから日本へ移入されたのでアメリカザリガニと呼ばれている。日本に、もともと生息しているザリガニの和名はザリガニ。単に、「ザリガニ」と言えば、日本固有のザリガニCambaroides japonicusである。しかし、アメリカザリガニや他のザリガニを総称して、ザリガニとも言うので、近年は日本固有のザリガニを
ニホンザリガニとかヤマトザリガニと呼ぶ人もいる。
 約80年前に、アメリカのオレゴンから移入されたザリガニPacifastacus leniusculus Danaの和名は、ウチダザリガニ

注)ウチダザリガニは、平成18年2月1日に特定外来生物に指定された。環境省の許可なく飼育したり、生きているのを持ち運ぶことはできません。


◎英名のRed swamp crayfishについて
 swampとは、低湿地とか沼地という意味である。アメリカザリガニの原産地、ルイジアナは湿地帯が多い。

◎アメリカザリガニは繁殖力が強い?
 
アメリカザリガニは、繁殖力が強いと考えられがちである。日本へ移入されたアメリカザリガニは、わずかな期間で日本の各地に分布するようになった。これは、日本の環境が水田などが多く、アメリカザリガニの棲息に適していたことと、生態系で天敵が少なく競争相手がいなかった(専門用語ではニッチがあいていた)からである。アメリカザリガニは、1度の産卵で数百〜800個の卵を産む。環境が適しており、ニッチがあいていれば、産卵した卵のほとんどは成体になる。この様子をみれば驚異的な繁殖力のように思えるであろう。しかし、繁殖力そのものだけを考えてみると、生態系でアメリカザリガニの棲息が均衡を保ったときは、年に1度で一生のうち2度産卵したとすると、産卵数は1千数百個になる。このうち2〜3個だけが成体になれば、個体数の均衡が保たれる。このような事実を加味すると繁殖力が強いと言うべきか、弱いと言うべきか???。アメリカザリガニは、日本で冬の季節を除くと、孵化した稚ザリガニは半年で成体になる。暖かい地方では年に2回産卵する。寿命は約2年といわれている。
 魚類や昆虫にも膨大な数の卵を産むのがいる。生態系のバランスがくずれると、ある種の昆虫だけが異常繁殖することがある。これは、産卵した卵のほとんどが成長することがあるためである。

成長に要する期間は
 山形県の場合、冬期間は、成長できないので、晩秋または翌年の春に孵化したアメリカザリガニは、秋までの半年間で成体になり雌個体は抱卵する。成長に適した季節であれば、孵化してから約半年で成体になる。ルイジアナで大きく育ったアメリカザリガニを見せてもらった。約半年前に孵化したものとのことであった。

アメリカザリガニの天敵
 雑食あるいは肉食の動物は成長の過程で互いに天敵になることがある。一般に、体の大きい種が小さい種を捕食する。例えば、トンボのヤゴは、自らの体より小さいアメリカザリガニを捕食する。アメリカザリガニが、ある程度成長して体が大きくなるとヤゴを捕食する。フナも稚ザリガニを捕食するが、ザリガニもフナの卵や稚魚を捕食する。
 ウシガエルは、ザリガニを捕食する。しかし、アメリカザリガニはカエルやカエルのオタマジャクシを捕食しない。カエルやオタマジャクシの皮膚には、神経毒が含まれており、ザリガニが食べると、極めてまずい味なのであろう。
 
注)近年、メダカやエビなど日本固有の動物の棲息が極めて少なくなったが、これはアメリカザリガニが食べ尽くしたとは考え難い。なぜなら、山形県内で30年程前までは、アメリカザリガニやメダカ、エビなどは共存して沢山棲息していたが、今では、ほとんど見られなくなった。外来種であるアメリカザリガニを排除しようと考えるのは、結構なことと思うが、貴重な日本固有の動物までもが棲めなくなるような環境は極めて大きな問題であると考える。


なぜ、ザリガニは後ろへ進む?
 ザリガニは、いつでも後ろへ進むのではない。ザリガニが普通に歩くときは、前へ進む。急に逃げたりする時は、後ろ向きで進む。これは、大きくて重いハサミ(脚)があるので、すばやく動くときは、後ろ向きでハサミを引きずって進む。もし、すばやく前へ進もうとすれば、ハサミが泥に突き刺さったり、何かにひっかかって動けなくなるであろう。急に後ろへ進む時の推進力は、尾扇を広げて腹部を力強く屈曲させることにより生ずる。
 前へ進む時は、胸脚(第1脚以外の)4対で歩く。水中を泳いで前へ進むときは、腹脚で推進力を得る。そのため、腹脚を遊泳脚ともいう。成体のザリガニが穴など狭い所へ入る時は、後ろ向きで入る。前向きでは、第1ハサミ脚が穴の壁に突き刺さって進めなくなるであろう。


尾扇
 尾部の左右のそれぞれ2枚を尾扇という。これは、腹脚が変わったもの、すなわち、第6腹脚が形態変化して尾扇になった。

個体によって個性はまちまち

 ザリガニにも人間と同じように個性がある。多くのザリガニを1個体づつ個別に飼育して、同じように世話しているとそれぞれ個性があることが分かる。数日で人によく馴れるのから1年間以上経っても馴れないものまでいろいろである。

     
  
ハサミを上げて威嚇?いいえ、これはポーズ!        カメラを(背)後から向けてもポーズをとった。
  カメラにポーズをとったと言うよりは、私に愛嬌をふりまえているのだろう。


     
    
この個体は、前後いずれからカメラを向けてもポーズはとらない。このように個体によって個性がある。写真の上段と下段のザリガニは、研究室内で飼育している。


  ザリガニは、人に馴れて餌をねだったり、愛嬌をふりまく時も、威嚇する時もハサミをもちあげる個体がいる。一見すると同じように見えるが、ザリガニを飼育するならこれらの違いを見抜くことが大切。ザリガニが人に親しみを示しているのを威嚇と見なすなら、ザリガニがかわいそう。上の写真右のように、後ろ向きでハサミをもちあげても攻撃はできない。
 ただし、アメリカザリガニは、人に親しみをもっていてもハサミを閉じる強さを加減することができないようだ。挟まれると大変である。ウチダザリガニの成体は、大きなハサミをもち、ハサミの筋肉は強靭であるが、人になれると強力に挟むことはない。私が、ウチダザリガニを観察していて、手から落ちそうになるとウチダザリガニは必要最小の強さで私の手や指を挟んで落ちないようにしていた。多くの個体を扱ったが、一度も痛いように挟まれたことはない。研究で飼育していたアメリカザリガニには、時々挟まれ血が出た。


◎ザリガニにはさまれたら
 ザリガニにはさまれないように気をつけよう。もし、はさまれたらザリガニをそのままぶら下げると、すぐにはなす。これは、私達が鉄棒に長い時間ぶらさがっておれないのと同様に、ザリガニも自らの体重をささえられなくなるからです。ザリガニは、水中に棲んでいるので、空気中では体重が重くなる。両手でザリガニを持っていて手がはさまれた時は、他方の手をザリガニからはなしてザリガニをぶら下げる。

◎アメリカザリガニが繁殖した地域では、ニホンザリガニが駆逐されたとの考えもあるようだが、本当か?

 このようなことは、以下の理由からあり得ない。日本固有のザリガニは、秋田県北部、岩手県北部以北の湧水に生息している。アメリカザリガニは、日本では秋田県南部以南に生息しており、湧水ではなく田んぼや沼など止水に生息している。秋田県と隣接する山形県では、標高が山形市内より200〜300m高い所にはアメリカザリガニは生息していない。
 日本固有のザリガニは、夏に水温が(25℃以上に)高くなる秋田県北部以南や富栄養で溶存酸素が比較的少ない止水には生存不可能。これに対して、アメリカザリガニは、水温が28〜30℃になると成長がはやい。このように、日本固有のザリガニとアメリカザリガニとは、生息地や生息環境が全く異なっており、共存することは不可能である。
 ニホンザリガニがアメリカザリガニによって、北の地方や冷たい湧水に追いやられたのではない。

 アメリカザリガニが日本に移入されてから、そろそろ80年になる。移入される以前のニホンザリガニの状況を実際に知っている人達は80才を越えている。単純に考えてものを言うべきではない。もし、アメリカザリガニが入り込んだ地域では、ニホンザリガニが駆逐されたとか冷たい水域へ追いやられたと言うのであれば、納得のいく根拠をあげるべきである。また、アメリカザリガニの幼若個体をニホンザリガニと思い込んでいると思われる人もいるようだ。
 近年、温暖化でアメリカザリガニの生息の北限が北へ移る傾向がある。北海道の南部 --- 室蘭や白老、洞爺湖付近の温泉の影響で冬でも水温が少し高い所にも生息しているようだ。しかし、
これらは誰かが本州から持ち込んで放したものである。外来種を安易に放すことは慎むべきである。

ザリガニ釣り

 沼などでアメリカザリガニを捕まえるとき、成体のザリガニは釣る。釣るときの餌として、一般に、スルメを使うようである。私は、ブタのレバーを使う(ウシのレバーは、柔らかいので適さない)。スルメよりは、生のレバーの方がザリガニ釣りには適している。

クリップでも釣れる?
 某テレビ番組制作会社から、「ザリガニはクリップを糸に結んだものでも釣れるそうだが、何故か?」との問い合わせがあった。私は、このようなことを聞くのは初めてであった。早速、糸にクリップ、小石それぞれを結びつけ、屋外の大きなコンテナで飼育しているザリガニで試してみた。クリップ、小石いずれの場合もザリガニはそれらをつかまえて離そうとしなかった。そのため糸をそっと引き上げるとザリガニが釣れた。
 以上のことから、ザリガニは何か小さな物が動いているとそれに寄って来てつかむことがわかった。ザリガニは、水中で適当な大きさの物が動くと、それは餌になる小動物ではなかろうかとつかむと考えられる。

ザリガニ釣りは1日のうちで何時がよい?
 沼や池などでアメリカザリガニは、昼間は巣穴に入っているか、泥に潜っている。特に、天気のよい昼間は、なかなか釣れない。ザリガニは、天気がよく(晴天)て暖かい日は、日没の少し前に巣穴や泥から出て活動する。だから、天気がよい日は夕方に釣れる。天気のよい日の昼間でも、沼や池の底をかき混ぜて水を濁す(ザリガニが活動する季節、池や沼の水は濁っているが、さらに濁す)と釣れる。今にも雨が降りそうな空模様の時は、昼間でも釣れる。

アメリカザリガニがいる沼や池の水は濁っている
 アメリカザリガニは、泥に潜ったり出たりしているので、沼や池の水はザリガニが活動する季節は濁っている。沼や池の水が透明で底が見えるようでは、ザリガニは冬眠しているか生息していないかのいずれかである。

釣れるのは大きなザリガニが先
 一般に、沼や池などで釣る位置を変えずに同じ所で釣っていると、最初のうちは大きなザリガニが釣れる。その後、若いザリガニが釣れるようになる。これは、餌を食べる順序があり、餌の量が少ないときは、先ず大きくて強いのが餌を食べる。釣っている時は、釣る位置を変えずにザリガニを釣り上げるとやがて若い個体が釣れるようになる。しかし、幼若個体が欲しい場合は、沼や池の淵で、網ですくうのがよい。一般に、幼若個体は淵や浅い所の草に隠れている。

脱皮は何時する?
 脱皮の時は、他の個体に襲われても抵抗できない。また、脱皮すると殻が硬くなるまでは、他の個体に襲われやすい。だから、アメリカザリガニは日中の明るい時に巣穴や泥から出て脱皮する。昼間は、他の個体は巣穴に入っているか、泥に潜っているので、脱皮している個体に気付かないので、脱皮する個体は安全である。夕方、他の個体が出てくるまでに脱皮した個体の殻はある程度硬くなるので、襲われそうになっても逃げることができる。だから、成体のザリガニは、主に朝方か午前中に脱皮する。幼若個体は、脱皮後わずかな時間が経過すると襲われそうになっても逃げることができるので、昼間でも夜間でも脱皮する。
 一個の水槽で数個体を飼育する場合、脱皮の時に共食いされる。共食いの危険度を下げるためには、水槽内にザリガニが昼間隠れる場所を完璧につくることである。脱皮するザリガニは隠れ場所から出て、昼間(成体は、主に朝方に)脱皮するので、他の個体は、脱皮している個体に気付かないか、気付き難い。水槽は、昼間普通に明るい所に置くと、ザリガニは隠れ場所に入る。

脱皮
 脱皮が近づくと、下の写真左のように頭胸部側と腹部側の殻が離れる。飼育していて共食いの心配があるときは、このように脱皮の兆候がでたら、別な容器に隔離する。別の容器に移す時ザリガニを丁寧に扱わないと、これが原因で、脱皮に失敗して死ぬことがある。
 脱皮は、消化管の表面を覆っているものも脱ぐので、脱皮が近づいたら餌を食べなくなる。
 
  

 脱皮殻は、ザリガニが食べるので捨てない。脱皮殻を食べさせないと、脱皮するたびに殻が柔らかくなる。

ザリガニとカニとの違い
 ザリガニとカニ、言うまでもなく背側から一見した形態は、ザリガニは細長く、カニは四角である。カニは、腹節と尾部が相対的に小さく、これらが腹側に曲がって胸部に密着しているので、背側から見えるのは頭胸甲の部分である。
 ザリガニには長い触角があるが、カニに長い触角はない。
 ザリガニ、エビ、カニなどの脚は、胸脚、腹脚、顎脚などがあり、胸脚が10脚なので10脚類に分類されている。

  

 [胸脚のハサミ]
 胸脚は、ザリガニは前から3対の先端部がハサミになっているが、カニは一番前の1対の脚だけがハサミで後の4対の脚の先端部は鈎爪である。カニの場合、これら4対の脚を歩脚といい、前から順に第1、2、3、4歩脚という。カニのハサミ脚は、獲物を捕らえたり、威嚇したり餌を挟んで口へ運ぶ時に使う。
 ザリガニは、胸脚の先端が鈎爪なのは、前から4、5番目の2対だけ。第1ハサミ脚は、獲物を捕らえたり威嚇する時に使う。第2(2番目の)ハサミ脚は、餌を摘んで口へ運ぶ時に使う。第2ハサミ脚が左右ともとれてなくなると第3ハサミで餌を口へ運ぶ。歩く時は、第1ハサミ脚以外の4対の脚を使う。


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