小・中・高校生の就寝時刻


 近年、高校生の就寝時刻についてマスコミがとりあげるようになったので、睡眠に関するアンケートを小学校・中学校・高等学校に依頼した。その解析結果は、予想はしていたが、おどろくものであった。特に、中・高校生は、午前0時以降まで起きている生徒の割合が高く、また授業時間中に眠くなる(ことがある)と回答した生徒の割合があまりにも高い。
 アンケートは、起床の時刻、その他6項目であるが、そのうち、午前0時以降に就寝する生徒の割合、午前の授業時間中に眠くなる(または、眠くなることがある)と回答した生徒の割合、就寝時の寝室内の光環境について以下の表にまとめた。


[就寝時刻]


    小学生                     平成18年2月実施

学年 7:30

8:00
8:00

8:30
8:30

9:00
9:00

9:30
9:30

10:00
10:00

10:30
10:30

11:00
11:00

11:30
11:30

12:00
12:00
人数

合計
 1   2   2   2   5   5   5   1   0   0   0   22
 2   2   6  13  38  18   5   0   0   0   0   82
 3   1   1  11  21  36  11   7   1   0   0   89
 4   0   1   7  16  26   8   7   2   2   0   69
 5   0   0   3  11  31  26  16   9   6   1  103
 6   0   0   2   5  16  20  14   4   2   0   62

 小学生は、夜8:00〜8:30には、就寝するのが望ましい。睡眠は、成長や脳の発達に大切である。



      中学 3年生(回答者 191名)                         平成18年6月実施

男女の別 午前0時以降に就寝する生徒の割合(%) 午前1時以降に就寝する生徒の割合(%) 午前中朝から眠い、または午前中眠くなることがある生徒の割合(%)
   男子        33.0        8.0         80.7
   女子        38.8       10.7         78.6

   表中で、午前0時以降の%には午前1時以降の値も含まれている。
   午前1時以降就寝の生徒には、午前3〜5時と回答している生徒がいる。


      高校生(回答者:1年生196名、2年生193名、3年生220名)       平成18年5月実施

学年
男女の別
午前0時以降に就寝する生徒の割合(%) 午前1時以降に就寝する生徒の割合(%) 午前中朝から眠い、または午前中眠くなることがある生徒の割合(%)
1年生 男子       50.0        13.3       91.9
     女子       57.7        13.4       87.7
2年生 男子       49.5        13.5       88.8
     女子       64.1        16.5       94.3
3年生 男子       60.3        22.6       95.3
     女子       67.5        22.8       94.8

    表中で、午前0時以降の%には午前1時以降の値も含まれている。
    午前1時以降就寝の生徒には、午前2〜4時と回答しているのが目立った。

 就寝時刻が午前0時以降の生徒が中学3年生では30%以上、高校生では約50〜70%になっている。午前3、4、5時就寝の生徒もいる。学校の授業に遅刻しないためには、起床は遅くても午前7時頃になるので、明らかに睡眠不足であろう。
 普通の睡眠覚醒リズムであれば、午前中に眠くなることはない。午前中、時間に関係なく眠い、眠くなることがあるを含めた回答率は、中学生で約80%、高校生は90%前後になっている。特に、高校3年生は約95%になっている。
 午前中眠いと回答した生徒は、二つに分けられる。一つは、遅寝のため、体内時計のリズム(生体リズム)が、数時間づれて睡眠の時間帯が午前中にづれ込んだもの。もう一つは生体リズムが狂い睡眠覚醒のリズムがなくなって、時間に関係なく何時でも眠い状態。午前中に眠いと回答した生徒の多くは、午後も眠いと回答していたが、これは生体リズムが昼夜逆転したか睡眠障害のいずれかと考えられる。
 アンケートの全項目をみると、睡眠障害の状態と考えられる生徒がいるのが目立った。
 起床の時刻が午前5時以前と回答している生徒もいた。単純に考えれば、早起きで好ましく感じられる。しかし、アンケートの他の項目から判断すると睡眠障害の状態と考えられる。
 ここにあげた例は、小学校、中学校、高校それぞれ1校についてであるが、高校については他の高校でもほぼ同様の結果であった。


[就寝中の室内の光環境]


     小学生

学年 真っ暗 電灯を
点灯
豆電球を
点灯
人数
合計
  1    8    2    11     21
  2   34    1    47     82
  3   42    0    45     87
  4   36    1    26     63
  5   51    4    46    103
  6   29    2    36     61



      中学3年生

男女の別 真っ暗 天井灯を点灯 豆電球を点灯 外の光が入って
明るい
  男子  35.2%    1.1%    33.0%     30.7%
  女子  37.9    0    37.9     24.3


      高校生

学年
男女の別
真っ暗 天井灯を点灯 豆電球を点灯 外の光が入って
明るい
1年生 男子  32.3%     3.0%    37.4%     27.3%
     女子  28.1     5.2    41.7     25.0
2年生 男子  31.5     2.2    31.5     34.8
     女子  31.7     3.8    29.8     34.6
3年生 男子  47.2     4.7    27.4     20.7
     女子  32.5     2.6    43.9     21.1

 光に対する感受性は人によって異なる。就寝中の豆電球の点灯は、ほとんど影響がない人がいる反面、体内時計が狂う人もいる。実際に、中学生・高校生のアンケートの結果では、豆電球を点灯している、または、外の光がカーテンを透して入ると回答した生徒に、睡眠障害と考えられる生徒、体内時計にリセットがかかっていない生徒がいた。静かな住宅地でも夜の外は、街路灯などの光で明るい。その光が、カーテンを透して寝室内へ入ると、豆電球を点灯しているのと同様の影響がでることがある。就寝中の寝室内は、真っ暗にすることが望ましい。
 注)寝室内を遮光すると朝、目が覚めない。起床の20〜30分前に、タイマーで蛍光灯スタンドなど適当な電灯が点灯するようにするとよい。徐々に明るくする調光器を使うと理想的である。
 天井灯を点灯したまま就寝すると回答した生徒は、他の項目から判断すると、睡眠障害になっていると考えられた。


[夜眠れるか ]
 睡眠覚醒のリズムが正常であれば、夜中に一時的に数度目を覚ましても本人はほとんど気が付かなく、連続して眠っていると感ずる。夜中に「数回目を覚ます」、「1〜2時間毎に目を覚ます」、「よく眠れない」と回答した児童、生徒は睡眠障害の状態と考えられる。

    小学生   表中の数値は人数

学年 ぐっすり
眠れる
1〜2回
目を覚ます
数回
目を覚ます
人数
合計
 1
 2   52    24     6    82
 3   50    29     8    67
 4   40    23     1    64
 5   70    28     4   102
 6   40    10    11    61

 小学生の場合、早めに就寝している児童は、就寝時間が長いので夜中に1〜2回目を覚ますことがあっても、特に問題はないであろう。遅寝で、1〜2回目を覚ますのは睡眠障害の疑いがある。


   中学3年生

男子 よく眠れる 1〜2時間毎に
目を覚ます
数回
目を覚ます
よく眠れない
 男子   86.4%     2.3%    6.8%    4.5%
 女子   81.6     1.9    14.6    1.0



   高校生

学年
男女
よく寝れる 1〜2時間毎に
目を覚ます
数回
目を覚ます
よく眠れない
1年生 男子   75.8%     6.1%    9.1%     9.1%
     女子   82.5     0    11.3     6.2
2年生 男子   78.4     1.1    13.6     6.8
     女子   80.8     2.9    12.5     3.8
3年生 男子   75.5     0.9    13.2    10.4
     女子   75.4     1.8    12.3    10.5

 中・高校生の、「よく眠れる」と回答した率が高いが、数字に惑わされてはいけない。中・高校生の多くは遅寝で、就寝時間が短いのでよく眠れたと感じているのではなかろうか。


[早寝早起きの重要性]
 現代社会では、「早寝早起き」と言っても、特別早く寝て、早く起きると言うものではない。ごく自然な寝起きである。私達の生体リズムでは、昼間活動し夜は休息しなければならない。私達の体内では、朝明るくなると体を活動的にするホルモン(セロトニン)が分泌し、暗くなると睡眠を誘導するホルモン(メラトニン)が分泌する。

 近年、一般家庭の夜の照明が明る過ぎる。このような状態では私達の体は、日没で夜になったことを感知できない。夜の照明は、出来るだけ暗いのがよいが、早寝の場合は人工光に曝される時間が短くなり、夜の暗い時間が長くなる。メラトニンとセロトニンが正常に分泌するためには、昼間の明るい時間と夜の暗い時間との均衡が大切である。遅寝遅起きでは、夜の人工光に曝される時間が長く、夜の暗い状態が短くなる。また、自然の光(太陽光)に曝される時間も短くなる。

 日没後、明るい照明下では、セロトニンの分泌が持続し、メラトニンの分泌が減少する。寝室の窓を完全に遮光しないで、朝遅くまで寝ていると、日の出で明るくなる。眠っていても光は瞼(まぶた)を透して脳へ入るので、セロトニンが分泌する。しかし、夜の状態の時間が短いので、夜間にメラトニが充分、分泌できなく、日中もメラトニンを不規則に分泌する。昼間、メラトニンとセロトニンが不規則に分泌するので、時々眠くなる。この状態が続くとセロトニンとメラトニンの分泌のサイクルが狂い、または短時間毎にメラトニンとセロトニンが量は少なくなるが何時でも分泌するので、睡眠障害になる。

[睡眠の重要性]
 睡眠は、昼間の体の疲れをとるのに大切である。特に、脳の疲れをとることは大切である。午前中、あるいは日中眠いのは、脳は半ば眠った状態である。このような状態で、学校で授業を受けても効率が悪い。夜は、充分睡眠をとって体や脳の疲れを翌日にもち越さないことが大切と考える。
 自宅での勉強は、集中して出来るだけ短時間で済ませて、睡眠時間を充分確保することが大切である。

 50年程前は、大学受験勉強に関して、「4当5落」と言われていた。これは、1日に寝る時間を4時間にして、猛勉強した者は大学の入学試験に合格するが、5時間寝る者は不合格になると言う意味である。その後、大学入学定員増により入学しやすくなり、「5当6落」と言われていた。私は、この考えにあえて反対ではない。なぜかと言うと、このような時代の受験生は、起きている時は猛勉強していたので、体内時計は狂わなかったようだし、昼間眠そうにしている受験生はいなかった。猛勉強のため、睡眠は効率的になっていたものと思われる。

 集中した猛勉強ではなく、夜遅くまで起きていることは体や脳のために好ましくない。

[夜型]
 受験生などで、「夜型」というのを聞くことがあるが、人間は昼間活動する「昼型」である。夜型というのは、生活習慣の違いによって生体リズムが昼夜逆転した状態である。
 夜に頭が冴えてくると自宅で勉強する時、有利になると考える人がいるのでしょうか。私には、以下の理由から不利にはなるが、有利になるとは考えられない。
 1.「夜型」の生徒は昼間、脳が半ば眠った状態で学校の授業を受ける。
 2.自宅での勉強は、一人よがりになり勝ち、学校の授業より効率はよくないであろう。
 3.入学試験は昼間実施される。夜型の受験生は、脳が眠った状態で受験する。試験が終了した日の夜に、脳が冴えてくると試験でケアレスミスが多かったことに気付くであろう。
 
 「夜型」の人と「昼型」の人とは、単純に昼夜が入れ替わったものではない。昼型の人は、夜に寝て脳の疲れをとるので、昼間は脳は活動的になっている。夜型の人は、昼間は学校の授業があるので寝ることはできなく、夜に勉強すると脳を使うことになり、脳が充分に休む時間がない(または、少ない)。

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